そろそろフリーランスや小さな事業者は考え始めたほうがいいインボイス方式への対応

目次

1. 適格請求書保存方式が始まります

 ほとんど最近話題にもなっていませんが、適格請求書保存方式(インボイス方式)が2025年10月から始まります。このインボイス方式に移行するにあたって原則事業者は適格請求書発行事業者になって登録番号を請求書に記載する義務が生じます。その登録のための受付は来年2021年10月からはじまります。税金面では消費税のいろいろな実務に影響を与えますが、一番大きな影響があるのは今まで消費税は関係ないと思われていた免税事業者のフリーランスや小さな会社の方々でしょう。インボイス方式による現在の区分請求書方式からの違いはいろいろあるのですが、ここでは免税事業者への影響を主にお話ししていきます

 ただひ、この影響の話をする前にそもそもの消費税の納税の仕組みを復習しましょう

2.消費税の原則

 消費税の原則的な仕組みは売上で預かった消費税から仕入れの際支払った消費税を差し引いて納税します。したがって税務署的な見方だと本来消費税は余分に預かったものを返すだけで影響は無いはずです。ただし、今まで免税事業者は売上と仕入の消費税の差額は払う必要がなかったので悪い言い方をすると本来納付しなければならない消費税を懐に入れていたということになりますこれが益税と呼ばれていたものです。

 一方で現実問題小さな零細企業は売上げの際にすべて消費税を転嫁できていたかというとそれも疑問です。昨年消費税が10%に上がった際も飲食店などで値段を据え置いている店も少なからずあったと思われます。こういったことを考えると単純に「益税」と割り切れるものでも無いと思います。

 しかし、今回のインボイス制度の導入の裏にはこういった「益税つぶし」という意図があったような気がしてなりません。これによってフリーランスなどの免税事業者にはどういった影響が出るでしょうか?

3.インボイス制度のフリーランスなどの免税事業者に与える影響

 このインボイス制度が始まると相手方から求められたら適格請求書(インボイス)を発行しなければなりません。ここでの一番大きなポイントは繰り返しになりますが、適格請求書発行事業者登録番号を記載しなければならないことです。ところが適格請求書発行事業者に免税事業者はなれない事となりました。これはいったいどのような影響があるのでしょうか?

 お客が事業者の場合、一部の例外を除き適格請求書発行事業者登録番号が記載されたインボイスでないと上記の仕入れの消費税部分を差し引くことができません。したがって、お客様に事業者がいる場合、現実的には課税事業者を選択して適格請求書発行事業者登録番号になるか消費税部分値下げして請求するかどちらかの選択を求められることとなります。

 しかし、例えば学習塾であれば一般的に相手は消費者しかいないので(さすがに自分の子供の学習塾の費用を経費で落とす事業者はいないと思うので)インボイス求められることはないので影響はないと思われます。一方、町の小さな文房具屋さんや中華料理屋さんであってもレシートや領収書をもらって経費で落とそうという人は適当にいると思われますので、もしインボイス発行できないというならば敬遠しがちになるでしょう。

 特に相手先が大きな企業であれば社内通達か何かでインボイス以外の領収書は原則経費としては認めないので提出しないようにといったことは十分あり得るでしょう。

 消費税の軽減税率が始まった際、実は区分請求書方式が始まり、その形式の請求書の発行が義務付けられました。ほぼ要件は適格事業者登録番号以外は記載要件は同様だったのですが、3万未満の場合は区分請求書発行は免除となっていました。しかし、インボイス方式ではこっそりその要件は外されています。つまりいくら少額でもインボイスの発行は必要(ただし3万未満の公共交通費などは不要)となります。

 それでは一体どうすればよいでしょうか?

4.フリーランスなどの免税事業者はどうすべきか?

 一応表面上はこの制度の激変緩和のためか経過措置があります。免税事業者から受け取った請求書で3年間8割部分、それから3年間5割部分の消費税を仕入として控除できるという制度です。しかし、経費処理する立場から考えると多分こんな面倒なことお客様はやりたがらないと思われます。ほぼ実態として適用されないのではないかと想像します。
 

 お客が完全に個人の消費者しかいない(事業者はいない)事業者がいても無視できる程度であれば対応不要でよいかもしれません。お客に事業者がいる場合はおそらく課税事業者になる必要があるでしょう。課税事業者になるという事は消費税の申告も必要なことに留意してください。

 消費税の申告、自分で申告している方でも会計ソフトを使っていれ場消費税の申告書に対応しているソフトが多いのでそもまま自己の申告で大丈夫ではないかと思われます。ただし、ある程度設備投資などがある業種ですと消費税の申告で落とし穴がありますので、これを機に顧問税理士はつけたほうが良いのではないかと思われます

 税理士としては、自分のお客様の請求書が適格請求書のインボイス要件を満たしているかチェックが必要ですし、しばらは相手方からもらう請求書も1枚1枚チェックしてインボイスの要件満たしているか見る必要があるでしょう。これはかなり面倒で正直ブル―ではありますね。