インボイス発行事業者になってくれ!は下請けいじめか?

目次

1.インボイス制度

  確定申告も終わり、少しずつインボイスセミナーのご依頼増えてきました。そこでの質問で多いのが現在免税事業者の方と、免税事業者を業務委託その他でいわゆる下請けとして雇っている方からです。

 消費税の原則としては売上等で受取った消費税から仕入や経費で支払った消費税の差額を税務署に納付するということです。預かった消費税マイナス支払った消費税分納付ですから原理的には損も得もしていません。しかし、インボイス制度が導入されるとインボイスを発行してもらわない支払の消費税は差し引けません。

 一方で、適格請求書(インボイス)発行事業者の登録をすると課税事業者にならねばいけないです。つ免税事業者の方はインボイス発行事業者になろうと思ったら消費税課税事業者にならないといけない、つまり消費税の申告・納付をしないといけないわけです。そうすると、そこでおこってくるのが元請けから下請けに対してインボイス発行事業者になってほしいと要請することになります。しかし、これっていわゆる下請けいじめとかにみなされないのでしょうか?

2.財務省や公正取引委員会の見解

  3月8日財務省や公正取引委員会より「免税事業者およびその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&Aというアナウンスが出ました。一回1月19日にも出したのですが、問い合わせが多かったらしく改訂版が出ました。それによると、適格請求書(インボイス)発行事業者になってほしい旨要請、つまり課税事業者になってほしいとお願いすること自体は問題ないがないそうです。ただし、そうならないと取引価格の引き下げをする、取引を打ち切りにするなど一方的に通告することは問題になります。

 加えて、仕入税額控除ができないことを理由に免税事業者に対して取引価格の引き下げを要請すること、そして免税事業者の消費税負担を考慮したうえで価格を双方納得の上設定すること自体は独占禁止法上の問題にはなりません。つまり経過措置(後述)は無いとして税込み1万1千円の製品を免税事業者から仕入れたとしますその際千円は仕入税額控除にならないです。一方免税事業者はその製造で消費税500円を負担していたとします。すると丸々千円値下げではなくこの免税事業者の500円分の消費税も考慮して価格を設定することが必要になってくるわけです

 しかし、一方的に消費税部分上記の例では1000円を値下げ、または同額の協賛金などを負担させる、商品の受取拒否などは法令違反になると思われます。実際の現場ではどうなっていくのでしょうか?、もう少し考えてみます

3.経過措置だとどうなるか?

 令和5年10月からインボイス制度導入されますが、免税事業者の方対象に経過措置があります。免時事業者の方が発行するインボイス、本来は消費税分すべて消費税額控除ができませんが、最初の3年は80%が控除可能で、その後の3年間は50%控除が可能です。どういうことかというと、前の例で千円全額仕入税額控除とならないのではなく80%の800円は仕入れ税額控除可能です。したがって、免税事業者から仕入れを行った会社の消費税負担は200円だけということになります。

 この経過措置で免税事業者の方は安心かというとそんなことはないと思います。当然この処理は会計帳簿上免税事業者らの仕入と記載しなければならず、かなり会計処理として煩雑です。システム対応も簡単にできるかわからず大企業の場合などは拒否反応があるのではと思います。

 免税事業者であることを理由に一方的に取引を停止したり、値下げを要求したりすれば法律上問題になることはたしかですが、値下げの理由や取引停止の理由を免税事業者であることにしなければいいわけです。したがって、特に大企業などは独占禁止法などに強い弁護士などを使いながら巧みにこのあたりやってくることは考えられます

 下請けの免税事業者としては露骨な一歩的な通告などは反論しても良いと思われますが、事業取引(消費者向け取引ではない)が多く、力関係的に非常に自分が強いということがない限りインボイス発行事業者になるのは結局避けられないのではというのが正直な実感です。