節税ふさぎの小噺をどうぞ

1.少額資産と節税

 今回は節税関係の小ネタです。一部では流行っていた少額資産を使った節税手法が令和4年度の税制大綱でふさがれることとなりました。いったいこれはどのようなものなのでしょうか?少し説明します。これは、10万円未満の少額な固定資産は一括して経費として計上可能になることを利用したものです。

 その前に少し、固定資産の経費処理についてお話をします。そもそも何が「固定資産」かという定義ですがざっくりいうと1年を超えて使用・保有する資産です。土地など保有で目減りしない資産以外は通常は減価償却という方法で何年かにわたって費用化(経費)となっていきます。

 ただし、この原則とは違う方法が一部認められています。10万円未満の少額な固定資産はその年に経費処理出来ますし、10万以上30万円未満の少額資産は一括償却資産として3年で償却できます。また、青色申告をしている資本金1億円以下の法人または常時雇用する従業員の数が500人以下の個人事業主(世の中で500人を超える人を雇っている個人事業主なんているのかしら?)は年間300万までこの10万以上30万円未満の少額資産をその年に一括で経費処理が出来ます。 そして、30万円以上の固定資産については原則通り減価償却という形で耐用年数に従って償却していくという形になります

 このうち、「10万円未満の少額な固定資産は一括して経費」を利用した節税手法がリース会社を中心に行なわれていました。どんなものだったのでしょうか

2.節税ふさぎ

 典型的なのが建築用足場のリースです。節税したい会社は9万円の建築用の足場を200個購入します。すると1800万経費に一気に計上して利益を圧縮することが出来ます。いわゆる「10万円未満の少額な固定資産は一括して経費」を利用しているのです。ざっくりその年は1800×30%(税率をざっくり30%とすると)=540万の節税になります。

 この足場はリース会社が保管しその会社は様々な建設会社にリースします。このリースとリース期間終了後の足場売却でこの1800万を回収するわけです。このスキーム翌年からはリース料が入ってきますからこの分は税金が増えます。トータルで1800万程度のリース料ははいるので要するに別に長い目で見ると払う税金がトータルで減るのではなく単なる税金の繰延です。

 似たようなものにドローンやLED照明を使ったものなどがありました。これって一番得するのはリース会社です。資金負担なしでリースの金利部分を丸々もらうことが出来ます。これはリース会社も「節税商品です!」と言って営業しますよね

 ただ、あまりにも露骨な節税だったので税務当局から目をつけられ令和4年度の税制大綱でふさがれました。少し細かく言うとこういったリースが本業ではない場合だけです。リース専業の会社は当然この対象から除かれます。微妙な例もあるとは思うのですが、この場合税務調査の際の調査官の匙加減で決まりますので、少なくとも節税目的でやっていたらアウトでしょう。

3.そもそもこの節税の問題点

 この節税案(厳密に言うと節税ではないですが)どんな場合に利用できたでしょうか?それは、棚ぼたのように利益が出てしまった場合、例えば値上がりした土地を売った、今回のコロナに関する助成金等で逆に助成金長者になってしまった場合などでしょう。

 繰り返しになりますが、税金の繰延であって別にトータルで払い税金が少なくなるわけではないです。そして先に購入代金という形で多額のキャッシュが出ていって後で少しずつリース料という形でキャッシュが戻る仕組みですですから資金繰りに余裕がない場合はやるべきではないです

 むしろあぶく銭(悪い言い方ですが)が入ったときはさっさと税金払う方が自然ではないでしょうか?後で税金取られる方が問題です。そして、特に成長企業などは結局ドンドン利益が出てくるので別に税金払いを先延ばしするメリットはないです。

 このスキームがメリットがある唯一のケースは収支はほぼトントンで少し赤字を出しているといった形のよく言うと安定、悪く言うと成長せず低迷している企業です。一時的な大きな黒字が出たとき圧縮して、将来の赤字部分をリース料でうまく埋め合わせればほとんど税金を払わなくて済みます

 あくまでも私の個人的な考えですが、社長さん、こんなことに知恵を絞る間があったら本業に力を入れてもっと利益が出る方法考えていただきたいと思います。相変わらずの税務署と節税手法のいたちごっこですがやむを得ない話とは思います