う~んこんな節税は・・・と思う事

1.節税スキームについて思う事

 会計事務所をやっていると、たまにスポットで節税スキームつくれませんかといった内容の問い合わせをいただくことが、あります。私のお客様でも税金はコストの一種なので無駄に税金は払わないようには一緒に考えていますが、節税スキームまでは考えていません。よく巷にある節税スキームは経済合理性のない不自然な仕組みで、これは節税ではなく租税回避だと考えているという点があります。租税回避は脱税と異なり法令自体には違反していません。ただし、要は法の網の目をくぐった仕組みを作るといったものであり、法律の文言自体では確かに違反をしていないのですが、本来の趣旨から考えれば反しているのではと感じることはよくあります。

 富裕層の方々からは一定数そういったニーズはあり、特にそういた仕組みを考える方を批判するつもりはないですが、私は興味がありません。そもそも自分のお客様層はこれからもご自身の事業を伸ばし社会的意義のあることを行なっていきたいと思っている方が中心なので節税スキーム考えるよりご自身のビジネスモデルを磨き、財務体質の改善やマーケティングをどんどん進めていくことに時間を使っていただきたいと思っています。

 ところで、節税スキームの中でよく使われるのが生命保険を使った節税があります。今税務当局は少し抜け穴をふさごうと通達をまた出すようです。これを少し見ていきます

2.保険節税

 社長様、ご自身の生命保険、代表者である社長が亡くなられたら会社にとって大打撃なので法人として一般的な定期保険に入ると思います。保険料は原則全額経費なので節税にはなりますが、別にこれ「節税目的」とは思っていません。これは大黒柱である社長が亡くなられた時のためのリスクヘッジです。

 一方、節税手法として古典的に保険会社と税理士がやっていたものに以下のようなスキームがありました。生命保険の中には解約時に払い込んだお金(解約返戻金)が戻ってくるタイプのものがあります。そのタイプの生命保険で返戻金があるのですが、途中まで非常に解約返戻金がほとんどなく、ある年から一気に解約返戻金が増える生命保険が考えられました。するとどのような手法が考えられるのでしょうか?

 すごく簡単に社長に対して年1000万の保険料で5年間返戻金0円、6年目から保険料払込み額の90%解約返戻金がある生命保険があるとしましょう(わかりやすいように実際の例よりかなり誇張しています。ここまで極端なものはさすがに販売していなかったと思われます)

 法人の5年間の支払総額5000万は経費です。5年経過時に法人から代表者個人に名義を変えます、解約返戻金ゼロ円なので個人・法人とも税金発生はしません。保険の評価としては「解約返戻金の額」なので評価額ゼロ円ですので。6年目に解約すると90%(6年目の保険料は個人で1000万払い)もらえるとるすると5400万保険金が入ります。

 代表者個人としては1000万しか払っていないのに5400万の価値のある保険が手に入るのです。ただ、世の中そこまで甘くなくこの5400万と払った1000万の差額は課税の対象になります。しかし、現状一時所得とされ、ざっくり半分程度の負担になるのです。

これは一時所得なので所得は(5400万-1000万-50万)÷2=2175万

 ポイントは一時所得は負担が半分になるということです。考えた人は頭がいいと感心はしますが、どう考えても税金逃れだけのための不自然なスキームに見えますよね。

3.税務当局の対応

 税務当局も考えました。上記の例だと保険料の払込額が5000万あり、この生命保険の権利が個人に只で移転するのはおかしいということです。本質としては代表者個人の給料だということです。ただし、このケース役員だと役員賞与になるので法人側では支払額は全額経費否認と思われます。(注:このブログは専門家向けではないの細かい要件や例外について記載はないのでそこは注意ください)

 そしてその給料としての計算方法は以下です。例の保険のピークの返戻率が90%とすると以下のような算式となります。

5000万x90%(最高返戻率)x90%=4050万

 要するに受取った方も4050万の給与があったものとして申告しなければならないとして、令和元年7月8日以降の契約から適用されます。そして、令和3年7月1日以降に役員等に保険の権利を移転した場合に適用するようです。まだ、手許には保険金が入っていないのに、税金だけは納めなければならないわけです。

 そして、実際に5400万保険金もらった際も
(5400-1000-4050)÷2=175万の所得があったものとしてまた課税されます。

 このスキーム、今までもいろいろと税務当局ともめることが多かったので通達を出して明確にしようとしているのでしょう。リスクをとってどうかして節税したい方やそれを支援する税理士や保険会社を非難するつもりはありません。自分はそんなところでチャレンジしたいとは思わないし、お客様にはどうせリスクを取るんだったらビジネスの挑戦で取ってほしいと思うので勧めません。

 大企業でも以前は税金が安いタックスヘイブンなどに利益の出る事業の所得を移転させることが賞賛されたこともありましたが今はどちらかというと、そういった租税回避行為はしないと宣言する企業も増えてきました。つまらないきれいごとと感じる方もいらっしゃるとは思いますが、私も無駄な税金は払わない、しかし、法の不備をつくような租税回避はしない、そんな方々を応援していきたいと思います。