市光工業にみるグローカル経営

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日本経済新聞で「帰ってきたぶり企業」という連載がされています。いわゆる久しぶりに最高益を更新して復活した企業を取り上げており興味深く読ませていただいています。今日は自動車部品の市光工業が取り上げられ仏親会社のヴァレオ出身のアリ社長が日本流カスタマーインティマシー(顧客と強固な関係を築いて顧客を囲い込む手法)を導入して一気に復活に導いた話が載っていました。

私もグローバル企業の子会社で何社か残念な会社を見てきました。たいていの残念な会社の特徴は子会社の社長に顧客ではなく本社の方を向いて仕事をするように強いることです。グローバル企業としての経営理念、ブランドイメージに係る部分や全体としての効率性についてはかなり本社の意思は尊重する必要がありますが、それ以外の部分は現場の意見というのは非常に大切です。しかし、酷い本社の例だと「顧客をもう少し教育しろ!」などと現場感のない本社の官僚的な上司から指令が下りてきます。アリ社長が来るまでは研究、開発、製造の各部門がそれぞれ権限を持つのはよかったのですが対応がバラバラで顧客の評判が悪く業績が悪化、名古屋の出張に新幹線が使えないなど縮小均衡的なコスト削減で目先の業績改善を目指す典型的本社を向いての経営が行われていたようです。

日本の製造業の特徴として「すり合せ」があります。特に車や機械など組み立て型産業に多いのですが部品メーカーと組み立てメーカーが一緒になって最終製品を作っていく仕組みです。これが研究、開発、製造の各部門がバラバラでそれぞれ言うことが違うと最終製品を作る組み立てメーカーとしては大変迷惑なわけです。アリ社長はこの3部門を統括する担当者を案件ごとに設置して、部門の独立性をある程度維持しながらカスタマーインティマシーを達成しました。

これは一見簡単なようです。しかし、欧米系の部品メーカーですと各部門は本当に別会社のようで日本法人の部門長は日本法人の社長ではなく本社の部門長の指揮下で動いています。これを日本法人として取りまとめていくのは社内政治力を含めた相当なリーダーとしての力量が必要だったはずです。

日本企業が海外に進出する際も現地法人のトップには本社の理念やブランドは守りながら必要な現地化は取り入れていく、こういった本社と政治折衝ができる柔軟で力量のあるリーダーが必要になってきます。こういった力は単なる英語力などよりも大切だと思うわけです。

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