監査法人はなれあいを排して虚偽を見抜くべきか?

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今朝の日本経済新聞の社説で監査法人の体制が厳しく批判されていました。骨子としては監査法人は不正を抑止するため、不正を見抜く力を要請してかつ抜き打ち調査など不正を摘発するための手続きを行うべきだということと、馴れ合いを防ぐために監査法人の交代制を入れるべきだということでした。

今回の東芝の事件を持って監査法人に不正を見抜く力がないと判断するのは非常に短絡的な気がします。財務諸表監査は「経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうか」を監査人が意見を表明することであって、そもそも不正を摘発することが目的ではありません。財務諸表が不正によって歪められている際には発見されなければなりませんが、今回もともと不正が見つけられなかったことが原因だとは思えません。どちらかというと今回は馴れ合いの問題でそういった意味では一定期間経過後の監査法人交代は一考の価値はあるかもしれません。

実は隠れた問題は監査報酬の安さと監査業務の内容です。東芝は監査報酬10億円ということでしたが約売上6兆6千万だと0.015%にすぎません。米国の類似企業のGEだと売上に対する率は0.058%で約4倍です。別に米国流が正しいわけではないですが、やはり監査報酬が安ければ監査にかける時間も限られます。一部の意見ではありますが一方で監査法人に対する金融庁の検査はとにかく書面作成にこだわり重箱の隅をつつくような書類の不備の摘発が多いとちらほらと聞きます。要するに本当にリスクある部分を重点的に監査しているかというポイントよりも些末な書類の不備などでとやかく言われるのでそういった雑務に追われる時間が多くなっているようです。

まとめとしては現場の監査人の判断でリスクが高いと思われている部分に集中して時間と人を投入できるような体制をバックアップするほうが単なる監査法人批判よりも建設的な気がするのです。