旭化成建材 -権限と責任から考える

傾き

旭化成建材のデータ偽装問題は担当者の個人的な問題であると当初言われていましたが、旭化成建材の全社的な問題に広がりました。しかし、私は今までの話を聞く横並び的な日本の建設業界の慣習から業界全体の問題に広がりそうな予感を持っています。

不正のパターーンとしては①チェックが緩いため担当者が好きに操作できる②権限と責任のバランスが取れていないため間に挟まれてやむを得ず行うの2つがあると思います。よくこの手の議論で性善説に立っているから悪いということがあげられますが、一般的な性善説が問題となるのは①です。グローバル的に見て、一般的な日本企業のモラルは高く性悪説に立ってガチガチに欧米並みのコントロールを入れるのは非効率だと思っています。別にきちんとしたデータを取っているわけではないですが、②のケースが日本企業では多い気がします。

おそらく一定の確率でくいが支持層に届かない事象はあるのではないでしょうか。その際の現場責任者の権限として工期を遅らせてくい打ちをやり直すということは実質的にできません。一方で「工期がおくれたらお前のせいだ」「くいを支持層に届かせる責任はお前にある」といった責任は全て本人が被らなくていけません。たとえば、「くいが支持層に届いていないことがデータでわかりました」と報告しても「それを工期を遅らせずに何とかやるのがお前の仕事だ」というように権限がない人間に責任だけ押し付けるとこのような不正が起こります。「くいが支持層に届かないケースがある」といった不都合な真実を経営者が自覚して責任が末端に押し付けられないようプロセスを考えておかなければなりません。または、現場に権限を委譲して健全な判断に対してはペナルティを課さない仕組みを作っておくということです。

わりと日本企業は権限と責任がアンバランスなケースが多いです。業界全体で共存共栄的な考え方があれば大丈夫かもしれませんが、下請けを徹底的にコスト面で叩くような業界だと日本企業の体質とあいまって不正が続出する可能性は高いと思います。こういった意味で旭化成建材のモラル問題に矮小化するのは違和感があります。