障がい者が働くワイナリービジネスモデルの秘密

1.帰宅途中のWineryの話

 私事ですが、11月23日と24日お休みをいただき温泉に行ってきました。しばらく土日も休みないくらい忙しかったので少し休養です。ゆっくりと休養した後、何となく帰りにワイナリーによりました。ちなみに全然ワインは詳しくなく、おそらく3000円のワインと30万円のワインの差がわからないレベルだと思われます。ただ単にガイドブックの急斜面のブドウ畑になんとなく惹かれるところがあったためです

 立ち寄ったのはCOCO FARM &WINERY(https://cocowine.com/)という栃木県足利市のワイナリーです。栃木県しかも足利市などというところにあまりワイナリーのイメージはなかったです。ただし、ここのワインは国際線のファーストクラスに使われ、スパークリングワインは九州沖縄サミットの晩餐会で使用されるなど定評があるとのことでした。そして、せっかくなのでワイナリーツアーに参加し、このワイナリーの成り立ちなどをお聞きすることができました。

2.ワイナリーツアーで聞いたこと

 HPなどであまり積極的にうたっていませんが、実は障がいを持つ人たちが始めたブドウ畑に起源があります。「こころみ学園」という知的障がいを持つ施設を運営していた元学校の先生だった川田氏という方が始めました。川田氏は障がいを持つ人たちに何かできることはないかと考え、農業を考えたのです。農業のため購入したのは平均斜度30度という急斜面、これはただ単に安く買える土地だったからでした(確か)2年をかけて生徒たちと開墾したとのことです。最初は野菜を植えたのですが雑草と区別がつかず雑草と一緒に生徒が抜いてしまう・・・ので間違えにくい果樹にしようとブドウを作り始めました。

 障がいを持つ人たち、生き生きと一日中草むしりを丁寧に行います。ある意味健常者だと嫌気がさすような仕事も嬉々としてこなすのです。しかし、だんだんブドウは競合が現れ売れなくなりました。そこで川田さんはワインを作ろうと思い立ちました。実は川田氏が酒好きだったのが一番の理由ではないかとガイドの方はおっしゃっていましたが・・・。ただし、社会福祉法人のこころみ学園では前例がないということで種類製造業の認可が下りず、生徒の父兄たちに資金を出してもらって会社としてワイナリーを作ったのです。そこで、いろいろな話をお聞きして感心したのはビジネスモデルとして成り立っているということでした。

3.ビジネスモデルとしてのすばらしさ

 一つは障がいを持った人たちというハンディを持った人たちの仕事場から始めています。これ自体社会的意義を持っていて素晴らしいという面は当然ありますがポイントはそこではありません。こういった一般的にはハンディを持っている人たちの良い点を見い出してビジネス化しているところです。とりあえずわかることはコツコツと我慢強く仕事をする点、非常に細かいところに目が付く点などそれぞれの障がいを持つ方の個性を生かして仕事をしています。当日お伺いした時もワイナリーのごみを黙々と丹念に拾っているこころみ学園の生徒さんを見かけました。

 一つの成果取り上げましょう。スパークリングワイン、私は今までワインに炭酸を単に注入するものと思っていましたが(無知をご容赦ください)こちらではトラディショナル方式をとっていて瓶に詰めたワインに糖分と酵母を加えて瓶内で二次発酵させる伝統的な製法を取っています。この製法では特に澱(おり)を取り除く作業は面倒ですが、障がいを持った方々が丁寧に仕事をしてそれを行っています。

 このスパークリングワインを高名なソムリエである田崎真也さんがワイナリーを訪れて九州沖縄サミットに使うかもということで持って行きました。その後何の音さたもないのでがっかりしていたところサミットの晩餐会の席で提供したスパークリングワインが使われているのをこころみ学園の生徒がテレビで見つけ大騒ぎとなりました。「私たちが作ったスパークリングワインを偉い人たちが飲んでいる!」ということですごく生徒たちの誇りとなったそうです。

 ちなみにセキュリティ等の関係で使用銘柄等は事前には一切知らせてはならない決まりだったと田崎氏からは後ほどお詫びとお礼があったそうです。

 こういった埋もれた財産を生かしてビジネスに生かすというのは社会的インパクトも大きく素晴らしいと思います。失礼な言い方であればお許しいただきたいですが、一般的に価値があまりないと思われたもの・人に隠れていた価値を見出し活用する価値転換のビジネスモデルといえます。

 加えてポリシーも心を打ちました。このワイナリーは哀れみで商品を買ってもらおうと一切思っていなません。よい商品を作ってその価値をしっかりわかってもらって買ってもらうというポリシーです。よくバザーなどで障がいのある方の作ったクッキーなどを販売していて私も購入することがあります。しかし、見つければ買いますがリピーターとなって買いに行こうとまでは正直思いません。

 ここでは、こういった障がい者の方も含めた皆様がプロフェッショナルとしてのプライドをもってお仕事されているのは素晴らしいと思いました。思わずファンになったといってもよいでしょう。非常に旅行の最後の心温まる体験でした。