吉本興業の減資 -単なる税金逃れ?
ついにというか、いわゆる有名大企業で税制上の中小企業優遇を堂々と使おうという実例が出てきました。日経の記事では財務の改善を図るためと書かれていますが、資本金から資本準備金に振り替えても自己資本の中の科目振替にすぎないですから全然財務指標も改善しません。よく減資で見るのは減資して繰越損失を会計上はいったんなくすという方法ですが新聞記事を読む限りそのような例には思えません。
ただ、大企業の欠損金の繰越控除が平成29年4月開始事業年度からは繰越控除前所得の50%しか認められない予定なので欠損がある大企業にとって減資をしたくなる誘因は高いと思われます。たとえば10億の欠損がある会社が業績が回復して10億の税引前利益があったとすると中小企業は10億-欠損10億で、所得はゼロとみなされ税金はかかりません。しかし、この例だと50%の5億しか認められませんから(10億-5億)x25.5%(現行の税率と仮定)=1.275億も法人税だけで負担しなくてはなりません。また、資本金が1億円を超えていると外形標準課税がかかり赤字でも課税されます。
この例は脱税ではありませんが租税回避と言えるでしょう。私は違法ではないが法が意図していない経済合理性の乏しい行為によって税金の負担を免れる行為を租税回避だと思っています。ただ、これも資本金の額で大企業か中小企業か分けるという税法の経済活動に合致しない条文に問題があると思います。大企業に対し外形標準や欠損金の繰越控除の制限で増税をしていけば当然このような行為は続出してくると思われます。「点滅信号みんなで渡れば全然怖くない」です(違法ではないので点滅信号)。早期の税法改正が望まれます。
ただ、吉本といい前回のシャープといい、関西系の大企業からこのような例が出てくるのは「どこが悪いねん!」という感じでなんとなく笑えます。