個人事業主の事業の経費と家事の費用の分け方についての基本的考え方とは
目次
1.事業経費と私的経費
今回は個人事業主の経費に関する小ネタです。私の場合、個人事業主の方については積極的に顧問を受託していません。理由はシンプルでクラウド会計ソフトや国税庁の確定申告作成ソフトがかなり使いやすくなりこういったことが苦手な方や時間を使いたくない方以外はご自身でやられた方が得策だからと思うからです。
ただ、個人事業主の場合、事業の経費と私的な家事の費用が混じってしまいがちなのでそのあたりをどのように記帳していくのかがやや難しい部分だと思います。おおむね多いパターンは2つでどうせばれないからと私的な費用もがっつり入れてしまう方と、税務署がくると怖いとかなり慎重な方と2通りあります。私はお客様の節税については協力しますが、脱税の協力はしませんので明らかに私的な費用については経費に入れないようにお願いしています
昔964(クロヨン)という言葉があり、会社員は9割、自営業者は6割、農業は4割の所得捕捉率という話でした。だから自営業者は売上を多少胡麻かしても良くて、経費も入れ放題でOKと思っている方をたまに見かけます。一回だけですが、こちらのお話も聞いてもらえないのでそういった方の顧問契約を解除させていただいたことがあります。
個人事業主の場合、税務署の調査などはまず来ません。ただし、だから適当にやっていいという話ではないとは思いますが、まじめにある程度私的な経費と事業の経費を「合理的」に配分すれば特に問題はないと思います
では税務当局の「合理的」とはどんなことなのかヒントになるQ&Aが出ているのでその話をしたいと思います。
2.自宅兼オフィスに関わる問題
個人事業主で自宅兼オフィスという方は多いだろうと思います。そうすると、特に事業を始めて間もない方から良くいただく質問はどの程度通信費や電気代などを事業の必要経費としても大丈夫かという話です。電気料金やインターネット使用料などはいわゆる在宅勤務費用とも言えます。ただし自宅兼オフィスで電気やインターネットを全く仕事以外で使わない人はいないでしょう。これは家事(要するに私用)と業務両方にかかる費用なので100%必要経費とすることはできないと一般的にはいえます。(完全に電気料金メーター等で区分している場合はのぞきます)
すこし、税法上の考え方をおさらいしてみましょう。税法上は取引の記録等に基づいて業務上必要で区分できる部分は必要経費に算入できるということです。「区分できる部分」とあるのですが具体的にどんなことなのでしょうか?
しかし、実は今まで業務使用部分の算定について「業務・経費の内容・資産の利用状況等を総合勘案して判定する」ということで具体的な計算例はなかったのです。面積割りでいいじゃないの?使っている時間で考えよう?ざっくり2分の1だけ入れようといった感じで様々な案がありました。
今回、国税庁の「在宅勤務に係る費用負担に関するFAQ」が公表されたのでそこに記載されている簡便法を個人事業主も使用して業務上の経費部分を算出してもよいということになりました。ただし、この計算方法を使うことが合理的であることが条件となっています。したがって私の見解としてはすでに自宅をオフィスとして使っている方の計算のある程度目安にして頂ければと思います。つまり税務当局の経費に関する考え方を何となく理解するという意味で別にこれを使った方がいいと推奨しているわけではないことをご注意ください
3.国税庁の見解
業務のために使用した基本使用料や通信料等は
業務使用部分=事業主が負担した1か月の基本使用料や通信料等÷その事業主の1か月の在宅勤務日数 X 該当月の日数÷2
電気料金は
業務使用部分=事業主が負担した基本使用料や電気使用料等÷自宅面積 X 業務使用面積÷2
この「÷2」の部分は何でしょうか。平均睡眠時間8時間をのぞいた16時間に法定労働時間(8時間)が占める割合です。個人事業主の方、もしかすると一日最低12時間は在宅で働く方もいらっしゃるかもしれませんし、6時間程度の方もいらっしゃるかもしれないので必ずしも「÷2」は合理的ではないかもしれません
税務当局の考える「合理的」とはどのようなモノなのかレベル感をつかんでいただければよいと思います。電気料金なども自宅にサーバーと冷却装置などをおいていればすごく電気を消費するので面積割りは合理的ではないといえるし、インターネットなども人にもよっては圧倒的に業務使用の部分が多く、2分の1は合理的ではないかもしれません。
要するにそのあたりを何となくではなくきちんと数値等で説明できるならばこの式にはこだわる必要もないわけです。ここまでまじめにきっちりやる必要あるの?といった疑問はわくと思いますが、イメージつかんでいただければと思いご紹介しました