皆さんに関係ありそうな令和6年度税制改正ポイントその1

目次

1.税制改正大綱とは

 あけましておめでとうございます。昨年はご愛読ありがとうございました。今年もよろしくお願いします。

 さて、昨年の話になりますが、12月22日に税制改正大綱が閣議決定され、日本経済新聞などには詳細が記載されていました。今年は定額減税、扶養控除、交際費における飲食費、外形標準課税、賃上げ促進税制あたりが結構話題にはなりました。扶養控除の話は前回のブログで少し話しています。個人的には外形標準課税の改正が結構衝撃的でした。

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 ただ、全般的な印象としては増税の話は封印し、小粒の改正という印象が強いです。国がどういった方向に向かいたいのかという方向性は感じないですね。

 さて、税制改正大綱とは何かということですが、各省庁から要求が出された税制改正について自民党の税制調査会が中心となって翌年の税制改正の基本方針をまとめたもので、大体12月下旬に原案が出てきます。これを閣議決定した後、翌年の通常国会で審議され可決されたものが税法改正として3月に発表されます。

 今回はその中で交際費の話をしてみたいと思います

 

2.交際費とは

 税務の世界で交際費とは何かという話ですが、それは「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するもの」で原則損金不算入、いわゆる経費にならない費用です。

 ただし、期末の資本金が1億円以下の法人は特例があって以下の2つから選べます。交際費とされる飲食費の50%までまたは、年間800万までの交際費は損金算入ができるのです。しかし、規模の小さい法人であれば通常年間800万を超えるほど交際費は使わないので、多分後者の規定によりほとんど意識もせず交際費は損金算入(経費)としているのではないかと思われます。

 加えて、資本金が100億以下の法人については前者が適用できるが後者は不可、そして100億円超の法人は全額損金算入不可となります。

 さて、この交際費の定義で「交際費とされる飲食費」があるということは逆に言えば「交際費とされない飲食費」があるということになります。どういったことなのでしょうか?

 

3.交際費とされない飲食費とは何か

 今まで、一人あたり5000円以下の飲食費は交際費の範囲から除外されていました。つまり全額経費に算入できます。ただ、少しややこしいのは社外の人との飲食費であり、例えば泊りで出張してきた自社の社員と夜飲食をするなど役職員同士の飲食はこの飲食費には当たらず交際費となります。

 ただ、5000円以下といっても例えば6000円の飲食をした場合、差額の1000円だけ交際費になるのではなく、全額が交際費扱いになってしまいます。いわゆる飲食店で「5000円のコース」が非常に多いのもこういった理由です。しかし、近年5000円のコースだと少しキレイ目な落ち着いた店だと男性だと足りないレベルの料理だったり、お酒の種類が非常に限られていたりしたような気がします。

 今回の税制改正でこの下限が改められ1万円以下となりました。一つは諸物価の高騰の中飲食業がこの飲食費の規定があるため、非常に値上げがしにくかったということは上げられるかもしれません。

 2つ目としてインボイス制度の導入があるでしょう。特にインボイスを発行できない免税事業者の飲食店の場合、今まで税抜5000円(5500円)であれば飲食費として認められていました。しかし、インボイス制度の導入で消費税の80%部分しか消費税額控除が認められないため、税込み5500円は今まで税抜5000円なため交際費の範囲から外れていましたが、昨年10月から税抜き5100円と取り扱われ、飲食費とすることができません(詳しくは以下を参照ください)。このあたりはインボイス制度導入に伴う小さなアメかもしれません。

インボイス制度で頭の痛い交際費処理の盲点 – TAマネージメント かわい公認会計士・税理士事務所 (ta-manage.com)

 あまり新聞などではフォーカスされていませんが、少し規模の大きな会社や免税事業者の飲食店にとっては注目すべき内容かなと思われます。