インボイス制度で頭の痛い交際費処理の盲点
目次
1.免税事業者との取引
いよいよあと1か月でインボイス制度が始まります。税務会計関係の雑誌を除けば、どちらかというと、マスコミなどは免税事業者が大変という話題が圧倒的に多いです。しかし、実はある程度の規模の会社、いわゆる消費税の簡易課税の制度が使えない課税売上年間5千万超の会社にとっては免税事業者との取引は頭の痛い問題です。
なぜならば原則的な消費税の計算方法(以下本則)の場合、ざっくりいうと預かった消費税から支払った消費税を差し引いて納税するわけですが、この支払った消費税を差し引く(以下仕入税額控除)をするためにはインボイスの入手保管が必要になります。しかし、免税事業者はインボイスを発行することができませんから、免税事業者が請求する消費税相当額分、本則の事業者は損をするわけです。
ただ、ここでややこしいのは激変緩和措置として国は経過措置を設けました。令和8年9月30日までは80%、控除可能11年9月30日までは50%控除可能といった感じです。しかし、本則事業者の経理実務としては極めて煩雑です。しかも、先日の税務通信という主として税理士向けの雑誌に交際費の取り扱いでさらに面倒な話が載っていて思わず頭を抱えてしまいました。
その中身の話の前にこれもまた面倒な交際費にかかわる税金の話をさらりとします。
2.交際費のルール
交際費は「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するもの」と定義されています。
その中で、取引先等との飲食費5000円以下の場合は交際費の範囲から除くことができます。ちなみに社内交際費(いわゆる社内飲み会)は金額にかかわらず交際費扱いとなります。
交際費扱いになるとどうなるかというとその飲食費全額の50%が損金不算入、つまり経費として認められないわけです。ただし、資本金1億円以下の企業は交際費年800万損金算入を選択することが可能なのでここでは、ある程度交際費が必要なある程度の規模の企業のお話です。
3.交際費と消費税の関係
そして、一定規模以上の企業、たいてい消費税は税抜き処理です。その場合この消費税のハードルは税抜き処理の金額で考えることができるので、飲食一人頭税抜き5000円以下であれば交際費から除くことができます。つまり全額経費にすることが可能なわけです。税込処理の企業は税込み5000円以下がこのボーダーとなりますが税抜き処理をしている企業はボーダーが税込み5500円(税抜き5000円)だったわけです。
ここで面倒になるのが免税事業者の経営する飲食店での飲食です。もし利用した飲食店が免税事業者だったら、いままで税込み5500円で交際費から除外していたところ、それがインボイス制度の導入でそんな簡単な話ではなくなったのです。そして上記の経過措置がさらに複雑にしています。
では例えばインボイス制度導入後も一人頭5500円の飲食を免税事業者の飲食店でしたとします。消費税相当額は以下です
5500÷1.1-5000=500
ところがこの消費税相当額の20%部分は仕入れ税額控除が認められない(=消費税として認められない)のでその部分は飲食費に加算され
500円x20%=100
今までの税抜き5000円だったのが税抜き金額は5000円+100円=5100円となり交際費となってしまいます。つまり半分が損金不算入となってしまいます。
この考えによれば税込み5393円(税抜き4902円)までが令和8年9月30日までのボーダーとなります。その後、このボーダーは経過措置が80%→50%→0%となるにしたがって下がっていきます。こんなこと実務において適用できるのか正直よくわかりません。税理士の立場でもチェックをして全部直していただくのか考えただけでも頭が痛いです。
当然税法の改正等で対応するのは、難しいと思われるのでぜひ国税当局の何らかの柔軟な対応を期待したいところです。