残念な退職金増税のお話

目次

1.岸田内閣支持率の低迷と増税

 岸田内閣の支持率が低迷というニュースをよく見ます。一部新聞の調査によれば30%を割ったという話も聞きます。マイナンバー問題だとか、自民党議員のスキャンダル(エッフェル塔撮影や秋本議員の汚職など)言われていますが、個人的には弱腰外交の他に「増税のキシダ」のイメージが大きくマイナスになっているのではないかと思います。

 その一つが退職金増税問題です。この目的は長く働く人が優遇されているので自由な働き方を推進するなどと書かれていますが・・・。

 その長く働く人の優遇とは何かというと退職金控除です。20年超の勤務に関しては控除額がそれまでの1年間40万円から70万円に増え、長く同じ会社で働くと有利という発想になるというわけです。ただ、そもそも、自分の退職金の計算しながら働くようなタイプの人、別に「自由な働き方」求めておらず「大きなお世話」だと思うのです。そんなきれいごとではなくはっきりと退職金課税安すぎるので少し見直す・・・の方がストレートで個人的には好感が持てます。

2.退職金課税増税案とは

今までの退職金課税はどうだったのでしょうか?例えば30年同じ会社で働いて3000万円の退職金をもらったとします。

退職所得控除:40万x20+70万x10=1500万

退職所得:(3000万-1500万)÷2=750万

これに対し分離課税20.42%

750万x20.42%≑153万で実際の負担率は5.1%です。

一方新しく増税案として出されたのは退職金控除の20年超の部分を70万→40万にするというものです。

退職所得控除:40万x30=1200万

退職所得:(3000万-1200万)x 1/2=900万

900万x20.42%≒184万

約31万円程度増えて総額3000万に対し6.1%の負担率で確かに負担は増えます。ただ、金額自体というより真面目にコツコツ働いてきた人の勤務生活最後の楽しみの退職金に水を差すというのが問題なのかもしれません。

 個人的には億を超える退職金でも分離課税20.42%で一定という計算法を変更する方が庶民感情としては納得できるのではないでしょうか。

一方、一応国も考えて取るべきところからは取ると方策はやっていて、天下り対策などは退職金課税でやっていますのでそれをご紹介します。

3.退職金課税の推移

一つとしては特定役員退職手当の導入です。平成24年改正で行われた措置で5年未満の勤続期間の役員等に支給する退職金については退職所得の1/2部分が適用さないという規定です。例えば1000万の退職金を3年外郭団体の勤務後もらったとすると

退職所得:(1000万-40x 3)x 1/2=440万

440万x20.42%≒90万

となったところ、1/2がなくなるので

(1000万-40x 3)x20.42%≒180万

と負担は大幅に増えます。ただ、これは何をターゲットにしたかというと公務員の「渡り鳥」天下りです。特にキャリア官僚などで2~3年で外郭団体を天下りで渡り歩いて高額の退職金をもらって退職金節税ができてしまうという仕組みに各方面から批判が集まり導入されたものです。

加えて役員ではないノンキャリアクラスの公務員の天下りもあり、同様に渡り鳥で高額の退職金を支給するケースが散見され、短期退職手当が2022年1月から創設されました。この場合は「高額の」退職金が問題なので前述の特定役員退職手当とは異なり300万を超える部分のみ2分の1がなくなるといったことでした。

ある程度、我々の将来の世代のことを考えれば増税はやむを得ないのかもしれませんが、今回案として出た退職金課税の増税案、あまり税収増えなさそうな割には感情を逆なでるあまり良い方式ではない気はします。