なかなか面倒なインボイスの保存義務

目次

1.公共交通機関特例とは

 最近は、おおむね週1~2回くらいのペースで各地の商工会議所、商工会を中心にインボイス講座をやっています。一方で、いろいろな疑問に対し国税庁を中心にQ&Aが出され改定がされていっています。やはり実務に導入すると様々な問題が生じ、そのまま単純にインボイス制度を導入すればいいというものではないです。

 その中で公共交通機関特例というものがあります。3万円未満の交通費についてはインボイスの交付が免除されるもので船舶、バス、鉄道がその対象となる公共交通機関です。少し考えてみれば、公共交通機関側にいちいちインボイスの交付義務を求めたら実務上大変というのは理解できると思います。

 ただ、この3万円未満の考え方が実はややこしいです。これは1枚の切符で判断するのではなく1回の取引で判断することになります。これって東京広島間を新幹線で購入して片道のみだったら約9000円なのでインボイス必要ないですが往復の乗車券を購入すると約38000円だからインボイス必要だという事となります。

 よく販売機で切符を買うと「領収書」というボタンがありますが、今後はこの領収書ボタンで簡易インボイスが出てくるのでしょうか?このあたりは不明です。やはりただこういった公共交通機関の利用で多く問題になるのは従業員の出張旅費の精算でしょう。別に事業主でもない従業員にインボイスの話を理解してもらうのも大変です。どうすればよいのでしょうか?

2.従業員立替旅費の特例と回数券特例

 ただ、この3万円の上限は会社が購入した場合であり従業員が立替をした場合は従業員出張旅費の立替の特例が使えます。従業員が交通費を立替えた分についてはどうするか考えると、当然従業員は適格請求書登録事業者ではないのでインボイスを発行できません。その際は従業員出張旅費特例の旨帳簿に記載することで特にインボイスの保存は求められないこととなっています。それはそうでしょう。従業員一人一人までインボイスの保存を求めていたら大変で業務が成り立たないです。

 もう一つ回数券特例というものがあります。例えば、新幹線の回数券そもそも消費税の課税関係、回数券を購入したときではなく、回数券を実際に使用したとき消費税を認識することとなります。これについては使用時に自動改札機などに回数券が回収されてしまうことがほとんどです。ただ、このケースも回数券特例が使え、インボイスの保存は求められません

 ただ、ほかにも従業員のように購入相手が事業者ではなくインボイスを発行することが困難なケースがあります

3.インボイスの発行が困難なケース

 いわゆる古本屋や骨董商などほとんど買取相手は一般消費者であるのでインボイスの発行はできないものと思われます。また、不動産の購入においても建物部分は消費税がかかりますがこれについても一般の住居者から購入した場合はインボイスは発行できないでしょう。これについても古物商や宅地建物取引業の免許を持っている場合には相手方のインボイスの発行が困難という理由でインボイスの保存が免除されています

 一方で、公共交通機関でタクシーはこの特例から外れています。タクシー利用の場合はインボイスは入手しなければなりません。どうやら法人タクシーに関してはレシート様式を変えることにより対応できそうです。しかし、個人タクシーの場合は都内ではあまりないですが地方だとまだこういった対応ができない事業者がいそうです。個人タクシーの業界としてもインボイスが発行できるような仕組みを導入しようとしているようですが全体には浸透しなさそうです。一応、インボイスが発行できる個人タクシーについてはその旨表示するようにする対応を考えているようです。

 インボイス制度、情報をアップデートはしているのですが、すべての例外事項まで完璧に頭になかに収めるのはなかなか大変です。意図的なものは別ですが税務当局もインボイスの保存なども当初はできる限り注意にとどめ、税務調査による過酷な追徴などは避けていただきたいとは思います。