知らないと損する単身赴任やホームリーブの交通費
目次
1.単身赴任の交通費はどうなる
コロナ禍の良かった側面として、いろいろな外出の制限により日本でもリモートワークが一気に広まりました。少しずつ自由な場所で仕事ができるわけです。ただ、まだまだ単身赴任というのは日本企業で存在しています。この是非における議論はともかくとして、1年に複数回自宅に戻る場合、その交通費を支給する会社は多いです。
しかし、この交通費、所得税法上は課税されてしまいます。つまり単身赴任社員はこの自宅に戻る交通費の分だけ給与が増えたとして税金が高くなるのです。人情としてはなぜ?と思いますが、この単身赴任者の帰宅交通費について、所得税法9条で非課税になるものとしてあげられている「職務を遂行するための旅行」ではないというのが一般的な考え方なのでしょう
多分この考えは10年前くらいは当たり前だったと思います。しかし、現在、社会情勢的には単身赴任が当然という風潮は薄れているといえます。単身赴任事態が不自然な形態であり、単なる一時的な居所、そして本来の住所は自宅であるからそこに定期的に戻るのことも職務を遂行するための旅行であると考えても良いのではないかとは個人的には思います。たださすがにそのロジックだけで国税当局に挑戦するのは少し危険かなとは思います
実際、ある会社から、このようなケースで社員からなぜ課税されるのかと不満が出てるとご相談受けました。ただ、国税当局も鬼ではなく、実は道は用意しているのです。それを見ましょう
2.単身赴任はどのように考える
実は法令解釈通達が昭和60年11月18日に単身赴任の旅費についての会社が出ています。
「単身赴任者(略・・)が職務遂行上必要な旅行に付随して帰宅のための旅行を行った場合に支給される旅費については、・・・略・・職務遂行上必要な旅行と認められ・・・、非課税として取り扱って差し支えない。」
と定めています。
単身赴任先から業務のついでに自宅に立ち寄ったとしても、その業務に直接かかわる部分の旅費については給与とみなして所得税を課税をしなくてよいということです。もう少し、具体的に言うと例えば自宅のある東京の本社から地方の工場に単身赴任したとしても、例えば東京の本社で月曜日または金曜日に打ち合わせや会議などが設定されていれば週末自宅にかえっていたとしても往復の単身赴任先⇔本社の交通費について給与所得として課税しなくてよいということになります。
気を付けなければいけないのは、一部の社員だけ適用できるなど恣意的な運用でないこと、やはりある程度の規模の会社であれば規程などを作成して運用する必要はあるでしょう。
しかし、このケースの場合は「単身赴任」と明記しています。一方家族で海外赴任している場合、1年に一回くらいは本国に帰りたいということはあるでしょう。こういったホームリーブ手当、本国で仕事あったとしても家族分の旅費は給与となってしまうのでしょうか?
3.家族のホームリーブ
いわゆる日本国内における外国人(本国を離れ、気候、風土、社会慣習等の異なる国において勤務する者)についても「環境の特殊性に対する配慮に基づくもの」なので「就業規則等に定めるところにより相当の勤務期間(おおむね1年以上の期間)を経過するごとに休暇」に関する帰国に関しては課税しないと法令解釈通達で出ています。 したがって、外国人の1年に1回程度のホームリーブの旅費を支給しても原則課税されないということになります
以前この点で税務調査でもめたことがありました。その会社は夏休み期間中外国人にホームリーブを認めていました。日本は酷暑の期間という配慮もあったと思われます。ところがその外国人の採用が新年だったので8月の帰国は「相当の勤務期間(おおむね1年以上の期間)」経っていないので課税すると税務調査官が言ってきたのです
そもそも法令でもない通達を機械的な文言解釈で運用するのは誤りだというのが、こちらの言い分です。「おおむね1年」かかれている趣旨は恣意的に年に何度も帰国するような方法を避けるためのものだと思われます。このケースの場合、会社は夏休みということでおおむね1年に一回と定めています。そもそも法令で1年以内は課税するなどと明記されているわけでもなく承服できないと突っぱねました。
結局この件は課税なしで終わりました。調査官の中には本来は役所内の事務連絡に過ぎない通達のしかも杓子定規な運用を根拠に課税要求してくるタイプいますのでこれは注意です。多分会社の規程でおおむね1年以内であることが定められていることで何とかなった案件だとは思います