なんとなくモヤモヤの税理士法改正

目次

1.税理士法改正

 令和4年度の税制改正で税理士制度が大幅に改正されました。税理士以外の方には基本的には直接関係ないことではありますが、ただ間接的な影響は実はあります。ということで少し税理法改正についてお話していこうと思います。

 大きな改正部分は税理士業務のICT化です。ITリテラシーが高い方は顧問税理士にICTに向けてやり方を変えるように促せるし、逆に弱い方にとってはいろいろと電子的なやり方を顧問税理士からお願いされることがあるかもしれません。

 税理士業務のICT化は税理士の努力義務です。様々な帳票のやり取りの電子化、対面ではなくWeb会議、E-TAXでの申告書提出などがあたります。したがって、顧問税理士にいろいろな書類を電子で出したい、事務所に出向くのではなくWeb会議でお願いしたいなどがやりやすくなると思います。
税理士法に定められた努力義務ですから。

 逆に税理士からもお客様に電子化した書類でのやり取りなどをお願いすることが多くなる可能性あります。ただし、あくまで「努力義務」で「義務」ではないので、特に国税が行政指導することも現状なさそうですし、最終的にやらなくても罰則はないです。

2.税理士事務所のリモートワーク

 一方コロナ禍で話題になったのが税理士事務所のリモートワークです。税理士法には実は税理士事務所は2か所以上事務所を持ってはいけないという規定があります。2か所以上事務所があるとニセ税理士・脱税指南などの事務所員の不正行為があってもわかりくいという理由だったと思います。

 ただし、コロナ禍でリモートワークの際、これが問題になりました。リモートワークつまり所員等が登録された事務所以外の場所で仕事した場合、税理士法違反の2か所事務所になるのではといったしょぼい議論が起こったのです。実は私は東京税理士会の綱紀監察の委員だったので会議で話題になったのを覚えています。

 ただし、最終的には所員が自宅から業務を行う場合は(税理士事務所と誤認する余地がないので)容認する方向になりました。しかし、ワーケーションとかサテライトオフィス等で業務をしてもらおうとすると当然税理士法上の問題が起きます。これが今回の税理士法改正の時の通達で変わりました

 簡単にいうとXX税理士事務所など外部に対する表示によって事務所かどうかは判断することとなりました。例えばサテライトオフィスなどで事務員が一時的に仕事をしても表示がない限り、税理士事務所とはみなされない、つまり2か所事務所とはされないということになったのです。

一方、とほほとこの改正で感じたこともありました

3.税理士法改正でとほほ・・と感じたこと

 これだけ税理士に対し電子化を要求しているのに対し役所、国税・地方税の電子化は遅れています
今だにメールは一切不可、すべて郵送・電話・FAXの3点セットです。特に追加資料などはFAXでのやりとりを要請されることが多いです。本当はFAXもういらない!としたいのですがいまだに国税・地方税のために、私の事務所でも古いFAXをだましだまし使っています。

 そして、特に地方税のシステムeLtaxのポンコツぶりはひどいです。インターネットエクスプローラーはようやく消えようとしていますが、結構最近までインターネットエクスプローラーでないと作動しないなどという状況でした。

 加えて、繁忙期には必ずダウンするというのが毎年の風物詩になっています。eLtaxのダウンで申告が遅れたという税理士に対して同業者の目は「埼京線が遅れたので遅刻しました」という社員を見る上司の目です(注:埼京線は都心とさいたま市を結ぶ路線ですがとにかく混雑がひどくほぼ10分以上通勤時間帯遅れるのは常識になっています)。

「隗より始めよ」という言葉がありますが、お役所は民間にICT化を要求する前にまず自身から徹底的にやってほしいと思います。