不動産と借入を使った相続対策に厳しい判決

1.相続対策に厳しい判決

 先日、いわゆる不動産を借入で購入して相続財産を圧縮させるいわゆる相続対策に対し最高裁で原告(相続人)敗訴の判決がでました。この判決は不動産業界、税理士業界などに衝撃を与えています。

簡単に経緯をお話しします。

 2009年当時90歳の被相続人が杉並区と横浜市のマンションを相次いで銀行借入れにより合計約13.9億で購入、2012年にこの被相続人が死去し、相続人である妻や子供5人に相続が行われました。その際のこのマンションの路線価(後述)による評価は約3.3億、その他の財産は約7億で合計約10億超の相続財産にたいしてマンションの銀行借入れも約10億程度あったので、この借入と相続財産を相殺するとほぼ相続財産はゼロで相続税の基礎控除の範囲内に入り相続税はゼロということで申告が行われました。

 これに対し国税当局はマンションの評価について不動産鑑定士による再評価を行い12.7億と評価実際の相続財産は9億程度はあると算定して差額を追徴課税したのがきっかけです。この処分が不当だとして相続人が裁判を行い高裁まで原告(相続人)敗訴が続き、最高裁の判決に注目が集まりましたが結局最高裁でも敗訴となりました

 判決は、「(路線価による)画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合」に、鑑定評価を行う合理的な理由があるとして国税当局の鑑定評価を認めたのです。

もう少し、わかりやすく説明します

2.路線価と相続税

 路線価とは国税庁が毎年1月1日に相続税や贈与税の算定基準となる土地の価格として毎年7月1日に公表する価格です。それは道路に面した土地の平米当たりの価格を出していて、通常相続税の相続財産である土地をその価額を元に計算します。相続税の申告において相続税法では相続開始日の時価で計算しなさいと定めていますが「時価」とは何かということで解釈が分かれます

 そこで国税庁では財産評価基本通達(評基通)で土地については路線価がある地域については路線価を使って評価しなさいと定めています。「通達」は法律ではなく、平たく言うと国税当局の内部規定にすぎませんが、税務署の見解の基礎となるものですからこれを参照して計算するのが一般的です。

 ただし、もう一ついわゆる評基通6項という条項があって要するにこの通達の方法で評価することが著しく不適当な場合は税務署側で別途別の方法で評価しますとあります。今回は最高裁はこの評基通6項を実質的に認める、つまり税務当局側で鑑定をとって再計算する手法を認め原告である相続人の敗訴となったわけです。これって一般の方からするとどこが衝撃的なのかよくわからないかもしれません

3.どこが衝撃的か

 この判決は様々なニュースを見ると特に節税商品として投資用不動産などを販売していた不動産業界や不動産投資商品などを販売していた金融業界に衝撃を与えたとしています。要するに相続税対策で売っていた商品・サービスの売れ行きが悪くなるかもということです。税理士としては路線価で相続税の土地の評価をしていましたが、後で税務署が評基通6項を持ち出して一部否認されるのではと不安になります。

 ただし、この判決は私の個人的な見解ですが別に国税当局が路線価が時価より低いからと勝手に時価で評価しなおすと言ったようなことを無制限に認めているわけではないです。

このケースでは
1)路線価による評価額が時価よりも著しく低い
2)高齢の相続人が借入で高額の不動産を購入など相続対策があまりにも見え見え
3)その結果相続税負担額がゼロになっている

 いわゆる租税負担の公平に反する、要するに金持ちが様々な策を弄して相続税を免れるのはまかりならんというわけです。ここまで露骨だったら税務署が黙っているわけがないですし、裁判所も仕方ないなぁという感じではないでしょうか。

 あくまでも自分の想像ですが、不動産屋と銀行が組んだ節税スキームにまんまと相続人さん達がのってしまった案件でまともな税理士だったら絶対やめろというと思います。不動産屋や銀行は相続人たちが国税の追徴受けようと関係ないですから。ちなみに自分がこの相続税の申告頼まれたら100%断ります

ただ、税理士という立場を離れて考えれば、税務署が自分で決めた路線価という価格で納税者が計算して後でそれを税務署が否定する、それってありなのとは思います。路線価という数字を公にだすならば少しは責任持てよとは思いますけどね。