一人社長の会社のたたみ方について考えてみました

目次

1.税金を払いたくないと思うに時に考えること

 少し前に、自社の決算がありました。幸い今年はコロナの最悪期から脱し今年度は黒字になりましたが、昨年は春先の数か月大きな仕事のキャンセルがいくつかありました。今年の決算はその際の前年の赤字があったため、納税はありませんでした。幸いオンライン化で業績は完全に立ち直ったので来期はまた、納税しなければなりません

 やはり税金はわかっていてもそれなりにまとまった額を支出するので支払うときは嫌な気分になるのは確かで税金払いたくないなぁと思うことがあります。税金を払いたくないなぁと思った際、2つの考え方についてみてみます

 1つは会社を成長させたい、ゴーイングコンサーン(継続企業)としたいという考えです。もう一つは、一人またはプラスアルファ(パートさんなど)程度でこじんまりとやって自分の代で会社はたたもうと思っているといった考え方です。私は前者のような会社を主として応援したいと思っていますが、自分自身は後者です。

 前者の場合、別に無駄に税金を払う必要はないですが、経費をやたらと使って節税しようとか保険など節税商品にやたらと注力するのはお勧めしていません。事業承継対策を除くと、基本は真面目に税金を払いつつ会社に内部留保を残していく方を勧めたいです。大きく成長するには勝負をかけて大きな投資をすることもあるでしょう。銀行借入などや外部資金の導入も検討するので、むしろ無駄な経費などは使わずちゃんと堅実に運営してほしいです。

 よく古いタイプのオーナー系にありがちなパターンですが、社長は経費使い放題、そのくせ従業員の給料は安いケースです。その場合、従業員の気持ちも荒廃しやすく。横領・背任なども経理がずさんな場合も多いので極めて起きやすいです。逆に社長も公私の区別はっきりさせていれば従業員も金銭的な面では締まりやすいです。

では後者の場合はどうでしょう

2.一人社長の会社のたたみ方 ー役員退職金

 逆に一人社長に近い会社で後継者ももとから考えておらず、一定の年齢でさっと会社をたたもうといった方もいらっしゃるでしょう。M&Aで売却する方法がないわけではないですが、そこまで小さい会社の場合はほぼ100%社長個人だよりで売却するのは難しいでしょう

 そうすると通常は清算といったことになるかと思われます。その際、内部留保、会社にオカネが貯まっているとどうやって会社にたまったお金を個人に戻すかが、会社たたむときに頭の痛い問題となります。オーソドックスな方法は退職金と配当の2つがあります。

 退職金で出した場合、かなり個人所得税的にも優遇されており有利です。ただし、全額内部留保を退職金で出せば良いかというとそう都合よくはいきません。金額が多いと税務署の調査がはいり、過大役員退職金として一部は役員賞与としてみなされるリスクがあります。役員賞与部分は法人側では経費とならず、個人所得税では通常の給与所得と同様に課税されてしまうので別名往復ビンタになります。

 過大役員退職金とされるのはケースバイケースなので顧問税理士がいる方は事前にきちんと相談することをお勧めします。一般的な目安とされている金額としては最後の役員報酬x勤続年数x3くらいです。これを大きく超えるとリスクがかなりあります。逆にいうとこの枠内であれば大きな問題になることは少ないと考えてよいかと思います。

 ただし、内部留保が大きくて、役員退職金では賄いきれない場合もあるでしょう。その場合はどうしたら良いでしょうか?

3.一人社長の会社のたたみ方 ー配当

 配当の場合、非上場株式の配当にあたるので総合課税になってしまいます。これ何がまずいかというと累進課税になってしまい、金額が大きければかなりの税金を払わねばならなということです。法人税を支払った残りが内部留保となるのに、それを配当するときには金額によってはまた莫大な税金を所得税として社長個人が払わねばならないのは腹立たしいかとは思われます。

 オーソドックスなのは内部留保額が多くなりすぎないように役員報酬をあげていくということになるかと思われます。役員退職金でカバー出来ない部分は配当となってしまうので累進課税を結果的に分散して低くすることとなります。その他、冗費でない程度には経費を使っていくということになるでしょう。

 では少し経費としての積立金の話をします

4,積立

 一方で役員退職金を出すと経費となり大きくその年はマイナスとなります。出来れば内部留保として大きな額にならないように毎年経費となるような積立金を残し、役員退職金を出すときにその積立金を取り崩して使えれば少ない内部留保で非常に綺麗に会社をたためます。役員退職金、経費、積立金取り崩し利益でお互い相殺するわけです。

 そういった意味で積み立てた金額が経費となる経営セーフティ共済(取り崩した時に益金となる)や保険商品(一部経費になるその部分が取り崩した際に益金となる)の意味が出てきます。経費として節税しておき、会社をたたむときは退職金の原資とするわけです

 ここで取り上げた経営セーフティ共済、別に節税商品として誕生したわけではありません。本来は取引先が倒産した際にこの積立金をもとに非常に低利で借入ができる中小企業基盤整備機構の商品です。ただ、積立額は損金となり解約した際に益金となるのでちょうど役員退職金に使えるので利用する人が多いです。欠点は、短期間で解約すると全額戻らないのでその点は注意です。

 保険商品は微妙です。以前はほぼ保険料が全額戻るような商品があったのですが、今はほとんど返戻率は70%くらいの商品となりました。また保険会社もいろいろと考えるでしょうが、基本的にはビジネスが安定していて、かつ引退時期がきちんと決まっている人向きです。私もあまり積極的には勧めていません

 会社をたたむときはその時考えるでも悪くはないですが、一応備えあれば憂いなしなので考えておいた方がよいかとは思われます