インボイス制度導入で実は一番大変な免税事業者はどうしたらよいか?

1.消費税の基本と免税事業者

 インボイス制度導入、このコロナ禍でも淡々と進んでおり、10月から適格請求書発行事業者登録の申請がはじまります。東京税理士会などは反対意見を出しているようですが、おそらく予定通り進みそうです。もしかすると免税事業者の方で消費税関係ないのでインボイス制度も特に気にしていない方多いかもしれません。でも実は一番影響が大きいのは免税事業者の方々ではないかと思われます。

 少し、消費税の基本からお話ししてみましょう。消費税 預かった消費税から支払った消費税を差し引いて納税するものです。税抜き500円のものを仕入れて税抜き1000円で販売した場合、受けとった消費税100円(1000円x10%)から仕入の消費税50円(500円x10%)差し引いて50円納税が原則です。見ての通り損も得もしません。

 免税事業者は消費税の申告が免除されているため、この50円の納付が免除されています。ただ、免税事業者は消費税を一切払っていないわけではないです。。仕入の時に50円払っています。ただし、もらった100円の消費税のうち50円部分は払わなくてよいので、これを益税とよんでいるわけです。

 さて、インボイス制度が代わるとこの制度のどこが変わるのでしょうか?

2.インボイス制度導入で免税事業者の方が変わること

 インボイス制度の導入でこの益税の部分にメスが入れられた形になります。支払った消費税50円を差し引く(仕入税額控除と呼ぶ)の要件として仕入事業者から受領したインボイスの保存が義務付けられました。ただし、「インボイス」を発行するための条件は、適格請求書発行事業者登録を行いその登録番号をインボイスに記載の必要が必要になりました。そして大きなポイントは、この登録のためには「消費税課税事業者」であることが条件なのです。

 これは、一体どういうことなのでしょうか。上記の例で仕入が免税事業者からであれば仕入の50円は差し引けず100円を納付しなくてはなりません。免税事業者はインボイスを発行できませんから。要するに免税事業者は適格請求書発行事業者登録を行い消費税課税事業者にならなければ取引から排除されるかもしれません、仕事が受注できなくなる恐れが出てくるわけです。

 ただし、免税事業者でも相手が100%消費者である場合は関係ないといえます。例えば学習塾の経営、相手は子どもなので別に請求書を受け取った相手はこの請求書を仕入税額控除として消費税を納税することはないでしょう。したがって関係ないわけです。しかし、取引相手が事業をやっていると消費税の仕入税額控除ができないため取引を断られる可能性が出てくるということです。

 ただ、このインボイス制度、免税事業者を対象とした経過措置があります。これで何とかなるでしょうか?

3.免税事業者に対する経過措置は役に立つか?

 インボイス制度導入令和5年10月から、免税事業者の消費税のうち3年間8割が控除、3年間5割控除できる経過措置ができます。免税事業者と取引する相手方は消費税控除全部はできないのですが一部可能になる経過措置があるのです。
 
 ただし、このような面倒な処理取引相手側にとっては面倒です。大きな会社だとシステム改修が必要など問題があり対応しない会社も多いかもしれません。

 実際に私の顧問先で研修会社がありますが、フリーランスの研修講師で免税事業者がいるがその取扱いをどうしようか相談を受けたことがあります。相談を受けた研修会社の場合は弁護士などとも相談しながら(下請けに対する優越的地位の濫用と取られないか)インボイス発行事業者(適格請求書発行登録事業者)となることを勧める方がいいのではないかと話をしました。

 要するに顧客からインボイス発行事業者であること=課税事業者であることを求められるか、取引からこっそり外されるかというリスクがあるわけです。

 では、どうすればよいのでしょうか?

4.免税事業者はインボイス制度にどのように対応する?

 やること自体はきわめてシンプルで、適格請求書発行事業者登録申請を税務署に出せばいいだけです。この申請自体は、記入個所もたいしてなく非常に簡単です。

 5年3月31日までに提出すれば10月1日の制度開始には間に合います。免税事業者はこの時期に登録申請をすると自動的に課税事業者となり、特に課税事業者となる届等は不要です。この届けいつ出せばよいかですが、実は今年10月1日から出せます。インボイス発行事業者にいなることを決意したらさっさと出せばよいということです

 早くだしても登録日は5年10月1日であり、消費税が課されるのも10月1日からなので特に不利なことはありません。そして例えば、個人事業主の場合令和5年10月1日~12月31日の取引についてのみ消費税計算すればいいのです。

 しかし、消費税の納税などしたことがないと不安な方がいらっしゃるかもしれません。しかし、たいていの会計ソフトは消費税申告書ほぼ自動で作ってくれますし、加えて大抵の方は簡易課税制度を使えば一層楽です。それは、売上の一定の割合を仕入れとみなして納税する方式で、例えば小売業だと80%を仕入とみなして控除できます。例えば年間税込110万円の売上の小売業、消費税10万円のうち8万円部分は仕入れとみなして2万円だけ納付すればという仕組みです。

 これを適用するとき、新しい消費税課税期間のうちに簡易課税申請を出せばその期に適用できます。例えば個人事業主だと10月1日から12月31日の間に簡易課税制度選択届を出せば、簡易課税が適用できます。

免税事業の方、ぼちぼち考えておく必要があるということです。