事業再構築補助金をアンゾフの成長マトリックスで大づかみで見てみると・・・

1.事業再構築補助金とは

 以前のブログで少し事業再構築補助金のお話しをさせていただきました。

https://ta-manage.com/subsidy/

よく考えてみると「事業再構築」皆さんになじみのある言葉だとその英訳である「リストラクチャリング」の方がなじみがあると思います。ただ、
リストラクチャリング補助金だと日本の場合単なる首切りのイメージが強い(リストラされたよ~)のでこういった妙に固い名前なのかもしれません。3月末に申請の手引きは公開されましたがそれを見ても公開されてからも何度も修正入っています。とりあえず急いで仕組みを作って、不都合のある部分をどんどん修正していくといった形で進んでいるのでしょう。

 こういった補助金の申請、実際に申請するときは細かく見ていかないと役所関係は不備があると一発アウトなので気を付けないといけません。一方で申請するかどうかを決める際には大づかみで見て自分の方向と合っているか見る必要があると思います。今回は大づかみでどんな内容の補助金なのかということをアンゾフの成長マトリックスを使って説明したいと思います。

2.アンゾフの成長マトリクスとは

イゴール・アンゾフは「戦略的経営の父」と呼ばれた経営学者です。事業の成長拡大を行う場合に考えることとして製品と市場、既存と新規というマトリックスで以下のようになります。

・既存製品x既存マーケット
 現在のマーケットに自社製品をもっと浸透させる戦略です。広告やセールスプロモーション製品のサイズやロットの変更などのマイナーチェンジを行うこ都などが挙げられます

 ・既存製品x新市場(市場開拓)

既存の製品を地理的に拡大したり違う顧客セグメントに販売することです。海外進出や女性向きだった製品を男性にも販売する戦略などが当たります

・新規製品x既存市場(製品開発)

既存の顧客に新しい製品を販売する戦略です。今の顧客とはつながりがあるので新製品を買ってくれる可能性は高くアップセルなどはこの一種だといえます。

・新規製品x新規市場(多角化)

新しい製品を新しい市場で販売するという戦略です。新しい投資や組織の変更など大きな変化が必要でリスクの高い選択といえます

そしてこの補助金は主に新規製品x新規市場(多角化)を対象にしているといえます。少し詳しく見ていきます

3.事業再構築補助金とアンゾフの成長マトリクス

事業再構築補助金を見ると大きく新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、グローバル転換の5つといえます。(他にもありますがざっくりいってこの4つの分野に含まれます)。新分野展開、事業転換、業種転換この3つ実は単にお役所が定める産業区分などの区分の違いだけで内容はすべて新規製品x新規市場です。

 アンゾフのマトリックスでも両方新規であり一番リスクが高い選択です。手引きの中で一つの例として日本料理店が焼肉屋を新しく始める例が挙がっています。どうみても現在のノウハウをあまり活かせるとは思えず、リスクは高い選択です。一方で焼き肉屋などは世の中にすでにたくさんあって、新たな需要を生み出すというよりも既存の他の店から客を取ってしまうだけにしか感じません。ミクロ的に見ると確かにコロナ禍で苦しんでいる
日本料理店を救えるかもしれませんが、マクロ的に見ると補助金を配ってまでやるべきことなのかはこの例はやや疑問です。

業態転換が新規製品x既存市場(製品開発)にあたります

ただし、やや定義は狭く既存の設備を使って新規製品を使うものは該当せず、主要な設備は新しいものでなくてはなりません。ただ、新しい設備を入れなければそもそも費用がかからず補助金も不要だという事なのでしょうか?
 
グローバル転換,これが既存製品x新市場(市場開拓)にあたるでしょう。新市場は地理的新市場と顧客セグメント上の新市場があります。この補助金、地理的という面で日本以外の海外の市場を開拓する場合だけに適用です。しかも海外に現地法人つくるとか海外売上比率50%以上計画とか一般の中法企業には非常にハードルが高いと思われます。

 正直、個人的には非常に狭い商圏でやっていたのを本格デジタル化で全国に広げるなども対象にして良いのではと思います。これも今までデジタル化を全くやっていなかったら「新商品」とみなされる可能性がこの補助金では出てきますが、既にデジタル化に着手していれば対象にするのは厳しいかもしれません。また、顧客セグメントを変えるという選択もあるでしょう。例えば女性向けだった製品・サービスを男性にも広げるこれも中小企業にとっては十分リスクのある選択なので後押ししてほしかったと思います。

 個人的な感想ですが巨額の補助金を出す割にはちょっとちぐはぐ感あります。中小企業を救おうという気持ちは伝わるのですが新市場x新製品・サービスに偏った補助金は本当に正しい方向なのか少しアンゾフの成長マトリックスから考えると少し疑問が残るのです。