注目しておいた方がよい年末調整の変更点
1.私が嫌いな年末調整
税理士の業務で注意力は使うけど頭は使わない業務として年末調整があります。この手続き、どんどん面倒になってきますし、後述するその導入の経緯からもなくなって欲しい仕事No1です。別に間違えていいわけではないですが法人税などはそもそもが切り捨てがあるので円単位間違えてもほぼ税額に影響がありません。一方年末調整は働いている方個々人の給料が関係するので1円でも間違えていたたらご本人としては気分が悪く許せない気分になってもおかしくないでしょう。こういた意味で単純作業だけど注意力は総動員するんです。これ私は結構苦手です。
ところでそもそも年末調整とは何でしょうか?
2.年末調整はそもそも何?
雇用主(法人や事業者)は給料を毎月従業員に支払いますがその際税金部分を天引き(源泉徴収)します。ただし、これはいわゆる仮計算なので年末に1年間の給与所得と標準的な控除額を元に雇用主側が再計算をして差額分を調整するものです。いわば確定申告を雇用主側が従業員に代わっておこなうようなものです。なぜならば従業員が確定申告を個別に行うと税務署が対応できないためです。言い換えると税務署の手間省くために雇用主側が代わってやってあげているものといってもよいでしょう。
そもそもこういった従業員に対する源泉徴収制度は第二次世界大戦に突入しようという日本が軍備費用を効率的に賄うためにナチス政権の仕組みを見習って採用したものといわれています。そのためか、雇用主側は「源泉徴収義務者」と呼ばれ実は罰則は厳しいです。給与支払いの翌月10日までに納付(一部特例あり)、しかも一日でも遅れると不納付加算税10%、税務署からの告知の前に行うと5%、加算税が5000円未満は免除といったものです。
確かに源泉徴収をしておいて懐に入れてしまう事業者などもいないわけではないのでそういった例についてはきっちり罰則があっても良いとは思います。一方、手間を押し付けておいて失念したり間違えると罰則、なんとなく国家による統制、全体主義的な香りがして別にリベラルでもなくどちらかというと保守的な私でもなんとなく反感を抱く制度ではあります。
さて、今回から年末調整大きな変化がありました。小さな会社で税理士さんがついていても自分である程度の資料集めはしなくてはならないし、従業員に説明できた方がいいでしょう。そういった意味で、変更点で雇用主さんに関係ありそうな部分のみお話します
3.年末調整の変更点
一つはさまざまな所得控除が変わった点です。給与所得控除が変わりやひとり親控除が今までの寡婦(夫)控除に変わり、これによりかなり様式が変わりました。この所得控除制度の変更については以前書いたブログを参照いただければと思います。
https://ta-manage.com/tax-return/
もう一つは様式が大きく変わったことです。「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という非常に長い名前のものに統合されました。これは今回から所得金額調整控除というものが導入されたからです。前のブログでもご説明したように給与収入が850万を超える給与所得者は今年から195万円で控除が打ち通常打ち止めとなるのですが以下の場合は所得金額調整控除を受けられます
イ 本人が特別障害者に該当する者
ロ 年齢 23 歳未満の扶養親族を有する者
ハ 特別障害者である同一生計配偶者を有する者
ニ 特別障害者である扶養親族を有する者
計算式はあるのですが、簡単に言うと上記の方々はほとんど昨年に近い控除が受けられます。年収850万円以上の方々、日本の平均年収から言えば高いのでしょうが子供が大学などに入っているケースも多く家計も苦しいはずという事で政治的配慮で導入されたといってよいと思います。ややこしいのは「扶養親族」でこれは扶養控除の扶養親族ではなく基本的に23歳未満の合計所得48万(給与だと103万)未満の子供はすべて対象です。また、一般の扶養控除が夫婦共働きの場合どちらかしかできませんがこの場合は両方適用可能です。扶養控除の場合、共働きの家庭はどちらに扶養入れようかしらと迷ったかもしれませんがこちらは両方適用可能です。
後は電子化とかあるのですが、こんな中途半端な電子化企業側は全く役に立たないよな・・・というのが正直なところです。確定申告の印鑑が不要とか言うどうでもいいようなしょぼい話が新聞にのっていましたが今後の電子政府でもう少し抜本的改革期待したいですね。