役員報酬 -株式の活用するにはどうするか?

株式報酬

 

以前武田の外国人CFOが他社に引き抜かれてしまった話をしました。一つとしてはやはり報酬が欧米に比べて低い点があることは確かでしょう。そして低い理由としては比較的思い切って支払いができる業績連動部分の部分が低いことがあるかもしれません。

日本取締役会協会の調査によると日本のCEOの報酬体系は固定が64%年次成績連動20%中長期業績連動16%でした。米国などでは中長期も含めた業績連動部分が70%ですから大きく異なります。

今朝の日経新聞では政府が株式での報酬を促すために会社法の新たな解釈指針を作るようです。基本的な考えは業績連動部分を増やし、グローバルに対抗できる報酬体系にしようということです。要旨は「パーフォーマンスシェア」と呼ばれる方法で中長期の業績目標の達成度合いに応じて株式を交付する仕組みのようです。大まかにいうと最初に金銭で報酬を受け取る権利を役員に与えた直後その権利と引き換えに譲渡制限株式を渡します。業績達成度合いについて譲渡制限を解除していくわけです。または業績達成度合いに応じて金銭で報酬する権利と引き換えに株式を発行して付与する方法のようです。

おおまかな方向性は賛成ですが懸念点はあります。一つは法人税法34条の「役員給与の損金不算入」で原則法人税法上定期同額、事前確定、利益連動以外の役員給与は損金不算入です。利益連動の要件も非常に厳しく税務リスクがあり、非常に業績に応じて支給する際の妨げになっています。(自分は法人税法34条は日本の活力をそぐ悪税法と個人的に思っています)この株式活用の仕組みが損金不算入になったり、税務リスクがあるのであれば企業はとても導入はできません。

個人の所得税法も不明で下手をすると金銭で報酬を受けとる権利をもらった時点で役員は給与として税金を払わなくてはなりません。そして、株式を受け取って譲渡した際、利益が出ていればさらに20%の譲渡所得税(+復興所得税)、値下がりしてもこの損は他の所得とは通算できないと元気が出ない税制です。少なくとも、税制上の整備ができないとこの制度は全く普及しないでしょう。

もう一つはガバナンスの欠如です。東芝で見られたように日本に名だたる企業でさえ、あの体たらくですから役員報酬などはお手盛りの可能性があります。少なくとも独立外部取締役で構成される報酬委員会での決議が必須でしょう。有価証券報告書の開示にしても1億円以上の報酬の開示はされていますが、今後はもう少し定型のフォーマットで報酬システムなども詳しい開示が必要かと思います。

随分ネガティブなコメントとなってしまいましたが、政府はひとつひとつハードルを越えて是非がんばって欲しいと思っています。