東芝の報告書を読んで -雑感
東芝の今回の不適切会計についての報告書を読みました。300ページ以上にわたる非常に長いものであり、拾い読みであるので多少理解が粗い可能性はありますのでそこはご容赦ください。
全般を通して感じたことは2つです。東芝の経営陣の上場企業として正しい会計報告義務認識の完全な欠如とダメな米国企業のような短期的業績至上主義(数字合わせ主義)の全社にわたる浸透です。報告書を見るとトップの関与がうかがわせるものもありますが事業単位であうんの呼吸で行っていた不正もあり、全社的に感覚がマヒして数字を上げるためには会計操作も辞さない社風が浸透していたことがわかります。私が勤めていた米国企業も2年続けて目標を達成できないとその事業の責任者・関係者はかなりの確率で首または降格されるような厳しいプレッシャーにさらされていましたが、会計操作は厳禁とされていました。したがって、厳しい利益要求=会計不正というのは短絡的な見方と思われます。社長をはじめとした経営陣が「何をやってもいいから利益は出せ」といったコンプライアンスなき利益追求が根本原因と思われます。
不正の中身ですが、工事進行基準についえは原価の付け替えのような悪質な不正はなかったように見えますが、損失が生じていることが判明しても、組織ぐるみで隠ぺいするようなことが常態化していたことがうかがわれます。監査法人ともめていた案件も少なからずあったようです。もともと、この見積原価の部分に関しては経理・監査部の関与やコントロールがあまり働いておらず、内部統制に問題があったということは明白に思えます。監査法人がJSOXでテストをした際になぜ発見できなかったかは正直言って疑問です。
パソコン部門においては部品支給をするベンダー先に対し、外注品完成時に売上原価のマイナスをする(パソコンの原価を減らして利益を計上)不思議な会計処理を取っており、これだと外注品完成で在庫していると自動的に利益が上がるという会計を取っていました。これも部門利益が期末時に大きく変動するくらいのインパクトがあったにもかかわらず監査法人が何も手を打っていないのは疑問です。その他の部門でも費用の繰り延べやリベートの未計上などが常態化しておりかなり荒廃した文化がうかがわれます。
ただ、たとえばかつてエンロンがおこなったSPCを用いた不正のように綿密な計画性のある不正ではなく、場当たり的に行っていたということ確かでしょう。それをもって、新聞等では悪質性は薄いとしているようですがなんとなく場当たり的だったら不正は許されるのかという点は疑問です。何はともあれ東芝のような素晴らしいところもたくさんあるはずな会社には非常に残念な内容だと思います。