免税事業者はインボイス制度で消える?

目次

1.適格請求書(インボイス)制度はじまります

 前回のブログで軽減税率のとほほな側面の話をしましたが、こういった消費税増税と軽減税率の陰でこっりちインボイス方式が導入されました(導入側はこっそりのつもりはないかもしませんが)。少なくとも税理士業界以外はほぼ話題になっていない気がします。

 通常一定規模以上の会社は受け取った消費税から支払った消費税を控除して納付するのが消費税の仕組みです。インボイス方式が導入されると一部の例外(3万円未満の自動販売機で購入する交通費など)を除き、適格請求書がないと支払った消費税を控除できません。この制度は令和5年10月から始まりますので、実は3年後、簡単に言うときちんと適格請求書を入手しないと消費税を多く払わなくてはならないこととなるわけです。

 適格請求書を発行するには適格請求書発行事業者として登録が必要です。その際、「課税事業者」であることが条件となりますから現在の免税事業者はそもままだと適格請求書発行事業者になれないということです。これはどんなインパクトがあるのでしょうか?

2.免税事業者

 売上1000万以下の事業者は消費税免税でした。それは、小規模事業者にとって消費税の申告は煩雑であろうという配慮ですが、おそらく想像では消費税導入の際、反対の大合唱でしたからそれを少しでも和らげる妥協案であったと思われます。しかし、問題としては売上の際の消費税が支払いの消費税よりも多ければ免税事業者にとってはその部分は利益(益税)となっていたことです。消費税増税の中でこういった益税の問題はクローズアップされ、この免税事業者の益税は4000億円にものぼるといわれています(1月14日ニッセイ基礎研究所レポートより)。

 免税事業者でも顧客が完全な一般消費者(B2C)であれば問題はありません。一般消費者は消費税申告をしていないからです。しかし、相手が一定規模以上の企業だと消費税が控除
できないわけですから取引を拒否するか取引上現在より不利な条件をもちかけられる可能性は高いでしょう。また、飲食店や小売店などは一見ほとんど相手は一般消費者に思われますが、実は法人の社員が「領収書で落とす」ために買っている事もあるので適格請求書発行できないとまずいでしょう。、免税事業者の方で実質的に法人取引が多い方は対策を考えたほうがいいわけです。

 一応経過措置として令和8年まで免税事業者からの仕入れにかかる消費税は80%控除可能という制度が設けられているのですが、だがそんな面倒なことやるのでしょうか?税理士としても勘弁してほしいところです。したがって、免税事業者であっても課税事業者として税務署に申請をして、適格発行事業者として登録するということになるでしょう。

 

3.適格請求書発行登録には

 この制度自体は令和5年10月1日から始まりますが、その日から適格請求書を発行するためには実は登録は事前の3月31日までに行わないといけないこととなります。適格請求書で登録しないとまずいのは「登録番号」です。他のものは形式(消費税額と税率を分けて書くなど)だけでよい(とはいっても請求書や領収書のフォーマットを変えないといけないので面倒ではあります)これだけは登録しないともらえません。そしてこの登録番号ない請求書は消費税控除の書類としては無効です。一応後で登録番号を書き加えても有効とされていますが、よほど規模の小さな会社でない限り相当面倒です。昔会社員のころEUの企業と取引をすると必ず”register code(登録番号)”と聞かれ、「日本ではない」と答えると「なぜ消費税があるのに登録番号がないのか?」と不思議がられていましたが、今回なぜ彼らが不思議がっていたかよくわかりました。

 ただし、9月30日までは「登録申請に困難な旨」があれば登録受付を認めるとしています。通常国税でこのような「困難な旨」は大地震や台風などの大規模な災害など極めて限定されていて厳しいのですが、今回は「困難の度合いは問わない」と明記してあります。あくまでも想像ですが「お目こぼし」はするよと国税も粋な計らいをするもんだと感じました。「登録」自体は以前消費税脱税をしたとか特に大きな問題行動でもない限りほぼ自動的に発番されると想像するのですが、この番号を適格請求書に入れないといけないわけですから早めにやりたいものです

 実は登録番号の受付は令和3年10月1日から始まるのでさっさとと済ませてしまったほうがよいでしょう。免税事業者で登録したいという方は、令和5年10月1日から課税事業者+適格請求書発行事業者とできますので、早めに決断したほうがよいかもしれません。

4.予想される混乱

 適格発行請求書のためのレジが必要になりますし、今現在の手書きの領収書とかは適格請求書の要件を満たさないのでなくなる、またはいろいろと追記の必要がでてきます。ややこしいのは契約に基づき自動振替しているもので、これは契約書内において適格請求書の条件が掲載してあればよいですが、少なくとも過去のものはないはずです。後で登録番号などを追記すればよいということになっていますが、面倒です。さっさと登録して、新たな契約書はこの適格請求書方式で運用できるような様式で相手方に渡すということが大切なのでしょう。

 税理士も自分のお客様に注意喚起するとともにと適格請求書の登録についてはE-TAXで代行処理するのでしょう。最初の2~3か月は多少注意してお客様の受け取る請求書・領収書は見ておく必要ありますし、暫くは混乱があるでしょうね。