起業家・事業者にとって借入は悪なのか?

 今日は関東地方では凄い台風でした。実は我が家では屋上の工事をしていたのですが、その工事に問題があったせいだと思いますが、雨漏りがすごく大騒ぎです。早朝は風雨がひどく、家から出れなかったので、雨だれの調べ(ショパンのピアノ曲のように優雅ではないですが)を聞きながらブログを書いていました。さて、私はもともと昔、会社員だったせいかどうも借入というのは住宅ローン以外は悪のような感覚があります。「借金漬け」などという言葉もあります。本当に借入は悪なのでしょうか?

目次

1.悪性の借入

 私は借入にも「悪性の借入」と「良性の借入」があると思います。悪性の借入は通常の事業のサイクルでお金が足りないということによって起こります。入ってくるほうは「売る」だと思うのですが「払う」方は代表的なものとしてモノ・サービス(材料)を買う、給料・外注費を払う、家賃・水道光熱費を払うだと思います。通常の事業サイクルでは「売る」>「払う」ですが、経常的に「払う」>「売る」だと当然決算書も赤字ですし、お金も足りません。こういったときお金を借りても、「払う」>「売る」ですから借入金を返す原資は通常ありません。資産のある方でしたら売却して・・とかありますが限界はあるでしょう。どうせ借入しても返せなくて負債が膨らむだけですからこういった借入は悪性です。

 ただ、こういった借入れも季節変動(例えばほとんど売上げは夏に集中する花火業)や大口の取引先の倒産や取引停止など一時的なものは仕方ありません。前者はほぼ後者の運転資金に近いですし、後者は緊急手術のようなもので仕方ありません。まずいのはよく下請け業に多いのですがじわじわと顧客や受注が減っていくパターンです。ゆでがえる的にだんだんと財務内容が悪くなっていきますし、本当にまずくなるまで銀行はお金は近年貸してくれますので本当に返せなくなるまで借金は膨らんでしまいます。

 こういった会社は私の場合、まだ借金が軽いうちに何かしら赤字補填の資金にプラスで新しい打開策のためのお金も借りることを勧めています。だいたいこの手の企業は「打開策は考えたいけどお金がないので・・・」という悩みがあるのでこれを借入の際にじっくり考えてもらうわけです。当然。危機感のある前向きな考えの社長さんであることが前提です。

2.良性の借入 -新規投資

 よく投資は税引後利益+減価償却の範囲内でといわれますがなぜでしょうか?利益部分は通常手元に残っているはずですが、減価償却費部分も手元にお金が残ります。減価償却部分の資金は資産を購入した時にすでに出ていってますから、費用として利益のマイナスになっていますがお金は手元に残っています。

 ただし、当然成長している会社はどんどんと規模が大きくなっていますから以前の資産の買い替えだけでは済まないはずです。そういった会社は拡大のため投資しますからこういったお金は借入で調達することは構わず、これは良性の借入といえます。ただし、優良企業が倒産するのも好景気の時の無理な投資が根本原因であることも多いので慎重に将来の需要なども見込みながら行う必要があります。

 一方このような成長投資ではなく現状の資産の取り換えだとしても手元資金の大部分を使ってしまうのは危険なのである程度手元資金も確保したいという意味で借入れをするというのも良性の借入といえます。不測の事態が起きて手元資金が足りなくなった時に比べ新規投資の借入はハードルが非常に低いです。残念ながら本当に困ったときには銀行の借入のハードルは高いです。営利企業ですから困っている=返済できる確率低いですからやむを得ないと思います。

3.良性の借入 -運転資金

 物販や製造業だと、仕入(材料)→(製造)→販売→回収のようなサイクルをたどるので通常、先に仕入れや製造の際にお金が出ていって、入金は回収の時ですから基本的に先にお金が出ていく形をとります。サービス業でも人件費や家賃などは現金商売でもない限り先に出ていく形になるかと思います。この先に出ていくお金の部分を運転資金と呼びます。ほとんどの業種は先にお金が出ていって後から回収しますから事業が伸びていれば伸びているほどお金は必要でこういった部分を借入れで補うのは良性の借入といえます。

 借入の代わりに建設業などのように特に回収までが長い業種は手付金などをもらうのは一つの方法ですが、顧客もなかなか先払いをしてくれません。できればもらう方はできる限り短いサイトで払う方は長いサイトにすれば運転資金は少なくて済みます。ただ、相手があることなのでこちらの思い通りにはならないですよね。こういった意味で借入は必要です。運転資金については短期の借入でいいという方もいますが、長期で少しずつ返済して自己資金を蓄えるほうが特に成長企業では良いと私は思います。

 一方中にはお金が比較的潤沢な会社もあるかと思います。そういった場合は逆に支払いなどは早くしてあげる代わりに値引きを要求するなどの方策があります。いわゆる激安現金問屋などはこうやって激安で商品を仕入れています。

4.でも銀行から借入するのは難しいのでは?

 ある程度のベテラン銀行員であれば決算書を見ればある程度貸せるかどうかはわかります。ただし、中小企業の場合、適当に決算書作っていたり粉飾をしていたりするケースはざらで、その決算書自体が信用できない場合が多くあります。一方、顧問税理士から申し込みの際に銀行の方に話をしてもらえば一般的にはその決算書の信用度はあがります。私の場合ですが、自分のお客様で融資を受けたほうが良いかある程度判断して銀行に話をするのである程度内容については信用があります。逆に言えば自分が紹介したお客様が銀行で延滞したりすると自分の信用にも関わりますし、お客様のためにもならないので、そのあたりきちんとやる方がほとんどです。

 ですから、銀行借り入れの際は顧問税理士にご相談することをお勧めします。銀行の方も永年の取引先は別ですが一般的には顧問税理士経由の借入の申し込みの方が信用度は高いおっしゃっていました。是非やってみてください。

 

こういったお金の話オンライン講座でやっています。

ご興味ある方は以下まで

超初心者向け 日本一優しいお金の話