固定費を下げれば事業はうまくいくというのは本当か?

 

 

 少し昔になりますが、あるベンチャーの経営改善でファンドの担当者と意見が合わず論争になったことがあります。その担当者は固定費が高すぎるので大幅に削るべきだということでしたが、私は一部同意する部分はあるが大きな方向性は違うということでした。この結末がどうなったかの前にそもそも固定費と変動費とはなんでしょうか?

 簡単に言うと固定費とは売上に関係なく一定にかかる費用、変動費は売上にほぼ比例してかかる費用です。固定費の代表例としてはオフィスの家賃や社員の人件費があります。変動費としては仕入の原価、商品配送の運賃などです。ただ、明確に区分できるものばかりではなく、例えば自社製造している製品の原価はおおむね変動費ですがその中には実は工場の減価償却費など固定費も入っています。派遣社員の人件費も微妙で変動費とは言われていますが、多少の売上の増減で派遣社員を雇ったり、契約を止めたりする経営者はいないと思います。このあたりある程度ざっくりした分類になることは避けられません。

 

    2.固定費はなぜ削ったほうが良いか?

 

 固定費を削ったほうが良いという考えの根本には損益分岐点の話があります。損益分岐点とはその点を超えて売上を計上すれば利益がでて、その点を下回ると損失が出る点です。売上マイナス変動費は粗利益(正確な会計用語では限界利益)ですが、固定費が高いと、それを超える粗利益を稼ぐためには高い売上が必要です。逆に言えば固定費が低ければ売上が下がっても十分利益を確保できます。したがって、一般的的には固定費が低い方が安全なビジネスができるわけです。

 したがって、単なる計算式的には固定費を下げれば下げるほど低い売上で利益がでるわけです。しかし、それでいいのでしょうか?少し、極端な例ゴールドマンサックス(GS)とOKストア(OK)の例で考えてみましょう。

3.ゴールドマンサックスとOKストアの話

 GSは米ウォールストリートの超一流投資銀行です。以前友人に会いに六本木ヒルズのGSの日本拠点にお邪魔しました。ヒルズの見晴らしの良い素敵なオフィスで家具などの調度品も豪華です。その方に聞いたところオフィスの場所の格は本社も非常に気にしますし、家具などの調度品は全世界共通で非常に高価だそうですがこの家具調度品を絶対に使わなければいけないそうです。

 一方昔ある用事でOKの本社を訪れました。OKはELP(エブリディロ―プライス)の激安スーパーです。当時は京浜急行の青物横丁のストア店舗の上にあるオフィスでかなり質素でイメージとしては倉庫です。青物横丁は私のイメージとしては東京では蒲田的な雰囲気、関西だと十三的なよく言えば庶民的な雰囲気の町です。

 どう見てもGSは固定費が無茶苦茶高く、OKは低いです。ではOKの方が財務のモデルとしてGSより優れているのでしょうか?実はGSとOKモデルが全然違います。GSは高額の手数料収入で粗利率は非常に高く、OKはELPですから粗利率はかなり低いと想定されます。結論として高い粗利率を達成するにはある程度の固定費はかけないといけないのです。まとめると高固定費+高粗利率か低固定費+低粗利率かの違いで、どちらが悪いとか良いとかの問題ではありません。

 固定費をかけてもそれに応じて高い粗利益を確保できているれば問題ないのですが、逆に分不相応に固定費をかけても無駄になるということことです。 

 

 

    4.ファンドとの論争の結末

 

 だいたいの流れはわかると思いますが、先端技術ですから高い粗利益率のビジネスで一部を除き固定費の大部分はそのベンチャ―企業の将来の成長に必要な部分だったので削減に私は反対し、具体的な数字で完全にファンドの担当者を論破してしまいました。確かにかけた固定費の効果はまだ出ない状況ですがもう少し我慢すべきと主張したのです。

 当然ファンドは株主ですから、最終的に意見の合わない私は辞めることとなり、そのベンチャーはファンドの指導の下、縮小均衡の末、私の辞職から数年後残念ながら姿を消しました。

 

 

 

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