真面目な納税者泣かせの広大地評価は変わるか?
平成29年度税制改正で広大地の評価が見直されます。そもそも「広大地」とは何かということですが相続税の計算の際に、1000㎡以上の(都市部は500㎡)広い土地に関しては相続税を減額しようというものです。なぜ減額かというとこのような土地の場合、宅地化して売り出そうとすると地方自治体より道路や公園など公共施設を作らねばならずつぶれ地が生じるからです。その部分の面積に応じて比例的に土地の評価を減額しようというものです。少し聞くとありがたい話のように聞こえますが実は大きな問題があります。どういったことなのでしょうか?
この広大地については法律ではなく、通達(国税庁内の規程)で評価がされることが実務であり、かつ非常にざっくりとしか書かれていません。加えて税務当局のさじ加減で評価がコロコロ変わります。例えば広大地は1画地で評価するとなっていますが、税務当局はそれが2筆以上の土地になっている場合など1画地ではないという解釈をしてくることがあります。また、マンション適地や工場用地はこの対象から外れてしまうので税務当局は不動産業者でもないのに、この土地はマンションにも転用できるはずだと解釈して広大地として認めないことがあります。そもそも広大な土地というのは一般的には処分が難しくてそのため単なる路線価x面積であると納税者に不当に高い負担が生じる可能性があります。いわゆる納税者の担税力を考慮した考え方のはずですが実態はかけ離れた実務になっています。そのため、税理士はたいていこの広大地の規程は適用せず相続税申告書を提出して、その後税務署と交渉をして更正(申告書の修正)をして広大地を税務署に認めてもらいます。なぜならば、そのまま広大地を適用して相続税申告書を出すとほぼ100%税務調査があり、かなりの確率で広大地を否認にかかるからです。そして、国税不服審判所(税務当局の取り扱いに異議のある場合判断する税務の裁判所)や裁判所で争うことになりますが、判例等を見てもほとんど納税者は敗訴しています。税務署のさじ加減で税額がコロコロ変わるという状況でした。一方で税務署との交渉が上手な税理士を富裕層が使えば、「比例的に土地の評価を減額」部分を利用し、実態以上の低い評価で節税に使えるという面もありました。社会的にも無駄なコストや負担がかかり、かつ不公平であり個人的には法治国家とは言えない状況があったと言えるかと思います。
今回の改正で広大地の減額率は外部専門業者の実地調査に基づき、各土地の個性に応じて評価されることになります。不動産鑑定士などの専門家が関与して、税務署の恣意的な判断の部分はかなり減ってくるかと思います。このあたりは期待したいと思います。これに限らず相続税の財産評価は法律ではなく、国税庁の財産評価通達という単なる国税庁内部の行政文書で決められ憲法でいう租税法定主義が歪められている面があると思います。このような部分は税理士として声を挙げていきたい部分かと思います
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