大企業のベンチャー買収の盲点?

注かい

今朝の日本経済新聞で大企業が人材や技術の取り込みを狙いベンチャー企業(VB)に対する買収や出資を急速に増やしているという記事が載っていました。記事によると2016年の出資を含めたM&Aは347件1025億円になり調査を始めた2012年の件数で6倍、金額で約3.6倍に増えました。日本経済新聞では大企業が自前主義を捨てて外部の技術などを自社に取り込み新製品を生み出す「オープンイノベーション」に舵を切っているからだと解説しています。

確かに最近いくつかの大企業で「社長の肝いり」で買収案件をさがしているという話を私も耳に挟みます。ただ、この手の話ではたいてい問題点があります。本来の目的は自社に必要な技術等を取り込み最終的には自社の発展につなげることなはずです。日本企業で往々にしてあるのは「買収すること」は手段にすぎないのにもかかわらず「社長の肝いり」ということもあって担当者が買収を焦ることです。よく買収案件で他社に案件がいってしまったり、条件が合わず断念したりすると「負けた」と言われ社長から叱責されたという話を聞きますが、無理な高値や不利な条件でも買ってしまうのは「勝ち」ではないはずです。VBの例ではないですがアサヒビールの東欧のABインベブ事業の買収などはとりあえず公表されている情報から判断すると典型的な例と思われました。

2つ目は買収の専門家の不足でしょう。以前ある大企業の買収に係った責任者の方から「この案件は一流投資銀行が仲介して一流会計事務所と弁護士事務所にデューデリ(買収監査)してもらったから大丈夫」と話されて耳を疑いました。本来被買収企業の将来性やリスク、買収企業との戦略適合性、文化の融合などいわゆるビジネスデューデリが一番重視すべきなのですがそれをした気配がないことです。法務や会計の専門家などはある程度そろっていますが基本的には現状のリスクを教えてくれるにすぎません。大切なのは将来であり、将来リスクを見込んで買収条件に取り込み、かつPMI(買収後の統合)プランの絵を社内でまとめてきちんと描ける専門家は重視されていないこともありほとんど存在しておりません。これもある大企業の役員の方から聞いた話ですが買収したのだが買収反対派の役員が邪魔をして全然活かせていないとこぼしていました。買収前にきちんと絵が描けていないとこのような話になります。非常に残念なことです。

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