鴻海によるシャープ買収に思う

honhai

 

鴻海精密工業が一躍シャープ買収の一番手に躍り出ました。まず思ったのはカリスマ性のあるトップによる素早い意思決定です。そして案をみるといろいろなところに目配りをしており感心しました。(ただ、これはシャープ側から見た見方で鴻海にとってこれが最終的によい買収であるかは今私にはよくわかりません。)まずは新聞などでも強調されているように7000億の出資で3000億の出資+2000億の融資枠で財務的には明らかに優れています。2つめは銀行対策で機構案は1500億のDES(借入金の株式転換)と最大2000億の優先株消却を求めているのに対し、鴻海は逆に2000億を買い取り特に追加の金融支援をもとめていません。加えて従業員と経営陣の雇用を確保して利害関係者のすべてにわたり機構案より有利な案を出しています。意識してかわかりませんが、実は4日はシャープの決算発表であり、営業利益は290億の赤字と通期予測の100億の黒字は下方修正間近かという話は吹っ飛んでしまいなかなか心憎いタイミングでした。このような大胆な案をこのタイミング出すようなスピード感には機構はかなわないはずです。

あとシャープのとって魅力的なのは液晶の立て直しに本腰を入れてくれるだろうということがあると思われます。シャープの今年度の決算成績を見ると足を引っ張っているのは太陽電池と液晶で特に液晶は370億の営業赤字とこれほとんど業績の足を引っ張っていると思われます。液晶についてはジャパンディスプレイ(JD)との経営統合を機構は目指していたようですが、JD自体もともと日立、ソニー、東芝の連合部隊である中でまたシャープが入ってうまくいくのかは正直言って心配でした。そういった中で広範かつ強固な顧客基盤をもつ鴻海との統合の方がうまくいく確率は高いような気がします。

液晶という日本の基幹技術が外資に移ってしまうことへのノスタルジーは自分にもあります。ただし、もう企業を国籍で考える人間は私も含めて遺物になりつつあるかもしれません。徐々に死に至るのでしたら、外資の下でも芽吹いてくれる方がいいのではないでしょうか?