知らないと損する…インボイス制度「控除50%」と“3割特例”の本当の関係
目次
1.インボイス制度が始まって
インボイス制度が始まって制度が定着したかというと、「結局どうすればいいのか分からない」という声はむしろ強まっているかもしれません。令和8年度税制改正で3割特例が創設され、免税事業者からの仕入に係る控除割合も見直されましたが、これで制度が整理されたかというと、実務の現場感覚ではむしろ逆です。
特に重要なのは、免税事業者との取引に関する扱いです。もともとの制度設計では、免税事業者からの仕入については段階的に控除割合が縮小され、令和8年10月以降は50%しか仕入税額控除ができない、つまり裏を返せば「半分は控除できず事業者の負担になる」というのが基本ラインでした。この“本来は5割までしか引けない”という前提がまず出発点になります。
そのうえで今回の改正で何が追加されたかというと、「インボイスを発行する本来ならば免税事業者であった個人事業主に限り納付税額を軽減する仕組み」が導入された点です。これが3割特例です。
ただしここは誤解しやすいのですが、3割特例は免税個人事業主からの仕入れの仕入税額控除の割合を3割にする制度ではありません。あくまで個人事業主が「売上に係る消費税額の3割を納付税額とする」という計算特例です。したがって、免税事業者からの仕入に対する控除割合(令和8年10月以降は50%)というルール自体は、相手が個人事業主であっても変わりません。つまり制度としては、免税事業者との取引は引き続き不利(50%しか控除できない)という前提を維持しつつ、個人事業主に対しては納税計算の出口で負担を軽減する措置を設けた、という構造になっています。
一方で法人にはこの特例はありません。予定通り5割の仕入れ税額控除です。これによりサービス業、不動産業を除き簡易課税の方が有利になります。
2.令和8年10月からの新しい制度を踏まえて
ここから経営判断の構造がはっきりします。インボイス制度導入まで免税事業者であった基準期における課税売上1千万以下だった個人事業主は、適格請求書発行事業者になって消費税自体を負担しても3割特例という「納税額を抑える選択肢」を持ちながら判断できます。しかし、法人にはそれがないため、制度の影響をそのまま受け止める必要があります。
その結果、法人にとっての論点はシンプルで、「簡易課税か本則課税か」をどう選ぶか、そして「免税事業者との取引をどうするか」に集約されます。例えば、簡易課税であればみなし仕入率によって納税額が決まるため(簡単に言うと売上消費税の一定割合のみ納税)、業種によっては有利になりますが、設備投資に伴う還付は受けられません。
一方、本則課税であれば実額ベース(売上に係る消費税から仕入れにかかる消費税を控除)で計算されるため、投資局面では有利になり得ます。なぜならば投資金額に係る消費税も「仕入」として控除できるからです。
一方、免税事業者との取引が多いと控除が50%に制限され、そのまま利益を圧迫します。要するに仕入消費税のうち50%しか控除ができないのでその分、消費税の納税が増えます。ここで初めて、税務の話が取引戦略や価格戦略の話に変わります。
3.まとめ
今回の改正は「免税事業者との取引は5割までしか控除できない」という原則を維持したまま、個人事業主にだけ納付税額ベースでの緩和措置(3割特例)を与えたものです。その結果、個人はある程度の調整余地がありますが、法人は簡易課税か本則課税かという選択を軸に、制度の影響をダイレクトに受ける構造になっています。制度が複雑というより、「どこで負担を吸収するか」が明確に分かれたとも言えます。
あなたが法人で本則課税の場合、この「控除は50%」といった構造を正しく前提に置けているでしょうか。
今まで税務調査においてもあまりこの免税事業者との取引における仕入税額控除80%をあまり厳しく見ていなかったようです。しかし、インボイス制度が定着してきていること、また控除が50%と大幅に減ったことで厳しく指摘してくる可能性は十分考えられます。
個人事業主である場合はこの3割特例の間に今後の消費税の選択、簡易課税か本則課税かはしっかり考えていただければと思います。

