公認会計士が税理士資格を持つことは問題か?

目次

1. 税理士と会計士

 毎年、秋ぐらいになると税理士法改正の話が出てくるのですが、その中で公認会計士の税理士資格取得を制限しようという話が出てきます。公認会計士と税理士の地元組織の役員を兼務している身としては複雑な気持ちになります。

 ただ、一応お互いの組織での利益相反になる事項なので私は組織内の議論においてはあまり積極的には関与はしないようにはしています(というか上層組織の政治折衝なので私のような末端会員は関係ないともいえますが)。

まず税理士となる資格としては以下の4つがあります

  • 税理士試験の合格者(5科目合格または一部科目免除で合格)
  • 税理士試験の全科目が免除となる人
  • 弁護士
  • 公認会計士

 税理士試験の全科目が免除となる人とは税務署の職員が該当し、一定年限の勤務+研修で一定科目または全科目が免除となります。そもそも税理士の監督官庁は国税庁なのでこちらの方も問題だと思っている方はいても、税理士会としてはおかみには逆らえず問題になっていないようです。

 この中で問題となっているのは公認会計士の税理士登録です。現在は税理士登録審査会が審査した指定研修を受講していることが要件となっています。ここで、よく議論として税理士会側からあるのが、税理士試験で弁護士は会計科目、公認会計士は税法科目の合格を資格の条件としようという議論です。ただ、そもそも弁護士で登録税理士業務をやっている人はあまりいませんので、焦点は会計士の方でしょう。

 

2.双方の主張から

 会計士側の主張の一つとして私が思うのは、世界的に公認会計士資格を持っていて税務業務ができない国はないということがあります。絶対にないかまでは未確認ですが少なくともG7諸国ではありません。

 加えて、公認会計士の場合、監査法人だけでなくベンチャー、大企業、巨大多国籍企業で勤務、監査業務やコンサル業務その他などで様々な経験を積んだ経験を人間が多く、バラエティに富んだ経歴の人が多いです。単なる申告・節税を超えた企業に対する総合的な経営的な支援という面では優れているサービスを提供できる人は多いとは思います。顧客目線で言えば公認会計士出身の税理士は望ましい面はあるといえるでしょう。

 一方税理士側から見てどうでしょう。これは私の私見ですが、資格の難易度で、もしかすると現在税理士試験>会計士試験となっているのではと感じています。自分が会計士試験を受けたとき、大学4年までの在学中に受かる人間は非常に少なかったです。今は結構在学中はざらです。私は1回目の受験で合格しましたが、当時は合格するのに2~3回受験するのは普通といえました。しかし、今は在学中合格や1回で合格もさほど珍しくなくなるほど難易度は下がりました。一方税理士試験は1科目受かるのに数年かかる人もいるといった難しさは以前と変わりません。もし現在会計士試験の方が容易だったら税理士試験を回避する抜け道になる、これは良くないともいえます。 

 一方、主として、税理士会が特に主張していると思われるのは税務知識のない人が税理士となると納税者の不利益になるということです。少なくとも税理士試験においては所得税か法人税のどちらかは選択が義務付けられ税法は3科目合格しないといけないので、かなり試験合格組の税理士は勉強していると思います。それに比べると会計士の取得する税務知識は限られているという主張です。これについて、私は正確にはわかりませんが、税務分野の資格を取得するにあたっての勉強量という面ではそうだろうなと想像します。

 

3.両方の立場から

 さて、ここから少し完全な私論です(一切双方の団体の見解とは関係がない事を申し添えます)。会計事務所では、単に税金計算だけ、経営指導などはあまり強くなく、財務体質や資金繰りの強化のアドバイスなど経営指導的なことは全くできない先生も結構多いようです。税金計算・相談が税理士の独占業務といっても顧客にとっては自分の経営をサポートする役割を期待しているといえます。この辺り、会計士は、ほぼできるところなのでやはりここは強いといえます。国際税務分野や組織再編系などの税務も大企業の経験が豊富な会計士出身の税理士は活躍しており、企業にとって会計士出身の税理士の貢献はあると思います。

 そもそも、税務知識の低い税理士が問題だというならば、税理士資格のない事務員にクライアント任せっきりでろくに指導もしていない事務所などの方がよほど納税者の迷惑でしょう。実際そういう愚痴をよく経営者の方からは聞きます。

 科目合格をしていないと税務業務ができないというならば例えば税理士であっても相続税の相談申告をするのに相続税の試験を合格していないとできないことにしないと平仄取れません。

 また、もしかすると税理士試験>会計士試験かもしれませんが、本当にそこまで難しい試験必要なのというのは思います。会計士試験が易しすぎるというより税理士試験が難しすぎるのではと思います。試験を単なる参入障壁とするのではなく、一定のレベル以上に資格は与え、実務でどんどん鍛えてできる人だけ生き残るという方が望ましくないか?これは私見ですがおもいます。

 一方、税理士としての立場から思うのは、とりあえず税理士資格取れるから登録するかと、すごく舐めた態度の会計士がいるのは腹立たしいです。中小零細企業相手の仕事と小ばかにしているよう態度の人間もたまに見かけます。

 以前、税理士会で税理士登録の際、見てすぐわかるような経費の水増しをしているような確定申告書を平気で申請書類として提出するような会計士がいて問題となりました。粗さがしの面もあるとは思いますが、そもそも税務のプロとして、粗が見てすぐわかるような申告書を出す方が恥ずかしく悪いです。納税は国を支える大切なインフラ、それを支える税理士という資格にちゃんとプライドとリスペクトを持った人だけが登録してほしいと思います。

 まとめると個人的な意見としては納税者の利便を考えれば大まかな制度はこのままでいいとは思いますが、会計士試験と税理士試験の関係を合わせてみていくことは必要でしょう。そして会計士側で税理士登録する人、ちゃんと覚悟をもっている人だけ業界に入ってきてほしいとは思います。