中小企業のPL方程式と良くないしるしとは?

目次

1.最近の銀行融資の傾向

 ある意味ありがたいことなのですが、ここ10年くらい、私のお客様を見ても、中小企業それも特に零細に近い分野に対する融資は全般的に緩くなり、コロナ禍がそれに拍車をかけた感じです。自分なりの見立てで難しいだろうという先も簡単に無担保(さすがに代表者の保証は外せない)で1千万までくらいだったら簡単に融資が下りています。

 旧来型の産業、いわゆるわかりやすい業種である製造・建設・小売といった業種、水商売といわれ以前は融資がおりにくい業種の代表で会った飲食や理美容なども設備投資であれば割と融資はおりやすくなりました。

 ただ、逆にITやバイオなどの技術開発系はある程度ビジネスが立ち上がって黒字でないと相変らず難しいようです。確かにこのあたり、本来は銀行融資ではなくプライベートエクイティなどのリスクマネーの世界だとは思います。ベンチャー投資の世界にも銀行や信用金庫ははいってはいますが、独自にというよりはある程度ほかの目利きによりある程度評価が定まっている先のみという感が強いです。もう少し入ってきてほしいなとは個人的には思います。

 さて、以前は融資が下りるためにクリアすべき一種の方程式のようなものがPL(損益計算書)にはありましたし、BS(貸借対照表)にはこれがあったら要注意というような印があったかと思います。今はこの方程式でNGでも問題なく融資が下りる傾向はあると思いますが、少し見て行きたいと思います。

 なぜならば、ゾンビ企業を存続させるべきかという議論は近年強まりつつあり、揺り戻し、いわゆるバブル崩壊後の貸しはがしのような事態が再燃する可能性もあるのではと思うからです。

 

2. PLに関する方程式とは

 PLに関して当然業績が良いに越したことはないですが、日本の中小企業の赤字の率は7割近いといわれています。赤字の企業の中には業種的に特に融資は必要でない業態もありますが、赤字の企業がすべて銀行融資を受けられないというわけではありません。そこで出てくるのが第一方程式です。(ちなみに以下の「方程式」等は銀行融資受けられるようにクリアしてほしいと私が思っている基準で別に公式に流布さているものではありません

方程式1

EBITDA(営業利益+減価償却費)>年間総返済予定元本

 EBITDAは(Earnings Before interest, tax ,depreciation and amortization )ですが、簡便的には営業利益+減価償却費です。減価償却費は費用ですが、支出自体は固定資産等を購入した時で、減価償却費自体はお金が出ていかないわけですから営業利益に減価償却をくわえた金額は借入金返済の原資になることができるわけです。ただ、この方程式を満たさない場合、方程式2の考慮余地はあります

方程式2

EBITDA+同族役員報酬+減価償却費>総返済元本

 これが何かというと、正直中小企業の同族役員報酬、自分の家庭の食い扶持にもしますが、利益調整の面もあります。この部分を調整すれば何とか借入金元本は返済できます。ただし、代表者家族もかすみを食べて生きていけるわけではないですから、営業利益がある程度回復する見込みがあればという話です。

ではBS(貸借対照表)はいかがでしょうか?BSには余分な悪い「内臓脂肪」のような「良くない印」」が見られると融資などに黄信号がともります。では「良くない印」を見ていきます

 

3.BSの良くないしるしとは

良くないしるし①

 これは非常にわかりやすいと思いますが、借入金が異常に多いということです。さすがに借入金残高が年商に近い、または超えているような状況だと、ちょっとした売上や利益の変動で資金がショートしてしまいます。一般的に借入金が多いということはかなり長期間返済に時間がかかるということですからこういったリスクが高い期間が長いのでたとえPLの方程式で何とかなっても融資などは後ろ向きになります。

良くないしるし② 

 雑勘定、いわゆる勘定名だけだと内容が分からない資産勘定や本来存在しないはずの勘定に大きな金額が計上されていることです。売掛金、建物などの勘定、中身はわかりますし、ある程度検証ができます。しかし、仮払金、前払金などは中身がなんだかわかりませんし、名前の通り雑多なものが含まれていそうです。

 また、研究開発系の会社でもないのに開発費とか金融業でもないのに貸付金などに大きな金額が載っているというのも本来その用途でない勘定に金額があるのですから広い意味での雑勘定です。

 これが、単に中身がわからないということ以上に問題なのは、本来は費用であるものを資産勘定に載せて損益を良く見せている、またはお金を私的な用途に使うなどの社外流出が疑われます。

 したがって、できる限り、そういった雑勘定きちんと決算までに精査しきれいにしておく、つまりあるべき科目に振り替えておく必要があります。

良くないしるし③

 異常に在庫や売掛・受取手形などの資産勘定に金額があることです。在庫や売掛金これ自体はある程度大きな金額が本来計上されていてもおかしくはありません。しかし、毎月の売上や売上原価と比較してその数か月分にもなる売掛債権や在庫は不良資産や不良在庫の存在が疑われます。回収サイトや販売サイクル(生鮮商品はすぐ売れると思いますが大型機械などはすぐに売れないし回収も時間がかかると思います)を見ながら判断してください。やはりこれは毎月ベースで古い在庫がないか、回収遅れや漏れがないかは気にしてチェックしておく必要があるでしょう。

 こういったことを毎月チェックしていくことで財務内容も健全化していくと思われますので是非試みていただければと思います。