本当にもやもやして面倒な定額減税

1.定額減税の顛末

 以前ある代議士がX(旧ツイッター)で「定額減税は最悪の政策、自治体や民間の担当者の無駄な負担を増やしている、せめてやるならばシンプルな給付が望ましいのに、税務当局や税理士の利権を守るために行った」というような趣旨の投稿をして炎上しました。

 さすがに税の仕組みを複雑化することによって利権を確立しようなどそんなよくわからない迂遠な策を考えている税理士はいないでしょう。財務省主税局の偉い人たちはわかりませんが、税務署の現場の人々もあえて納税者ともめるような複雑な仕組みを歓迎している人は極めて少ないと思われます。

 正直、現場の街税理士としては定額減税なんて大迷惑でしかありません。クライアント側に定額減税のあらましはお伝えしなければいけないうえに、誤り等がないか余分なチェックが必要です。このような追加労力が結構かかるのに、別にその分追加料金がいただけるわけでもないです。クライアント側も余分な労力が給与担当者には相当かかっていますから顧問税理士から定額減税に伴う追加業務の追加報酬などといわれたら激怒でしょう。したがって、「利権」などというならばそんな権利は熨斗をつけてお返ししたいです。

 ただ、前半の「定額減税は最悪の政策、自治体や民間の担当者の無駄な負担を増やしている。せめてやるならばシンプルな給付が望ましい」部分は大いに賛同します。なぜ給付でやれないのでしょうか? また、いろいろな例外などがあって税理士でも困ります。このわかりにくさ何とかならないでしょうか?

 

2.なぜ給付でやれない

 もし全国民または自治体でその区域在住の全市民の名前と銀行口座などが分かれば給付をすればいいわけですが、当然子供などは振り込むための口座を持っていないケースも多いわけです。市民の全口座なども把握していませんし、家族ごとの名寄せや名寄せしたところでどの口座に送るかの情報の入手が必要です。

 1億を超える国民が対象なわけですからその手続きは膨大、しかも間違えたらマスコミ等で鬼のように叩かれることは明らかです。IT後進国で、マイナンバーカードさえ結局ほとんど活かせていない日本ですからまぁ無理といえます。

 また、6月以降毎月定額減税の手続きをしないといけないというのは面倒でしかないです。いわゆる年末調整の際の扶養親族等とこの定額減税の扶養親族等は範囲が違うので、その対象者は6月の定額減税の始まる前と年末調整の際の2回書類を出してもらわないといけません。

 そうすると、従業員の中には「面倒だから年末調整の一回でいいよ」なんて、特に独身貴族などであれば言わることはぽつぽつあるようです。一応お客様には「ルールとしては年末調整と月次減税の選択などはできないことになっています」と説明はしていますがモヤモヤ感があります。

 

 3.その他もやもや

 今年、赤ちゃんが誕生した方、国税の定額減税は令和6年の末の状況で考えるので対象になりますが、住民税は令和5年末の状況なので総務省などの発表を見る限り対象から外れます。

 扶養親族なども海外に在住の場合外れます。しかし、1年少し超えるくらいの滞在だと住民票を移していないケースもあります。「ばれないはずですから別にそのまま定額減税受け取ってもいいですよね」などといわれても立場上「ばれないからOK」などとは申し上げられません。ただ、苦しい家計の中から、子供のためを思って留学させているのに扶養はOKだが定額減税はNGというのは納得できないといわれても何とも対処できません

 パートをたくさん抱えている会社もとりあえず扶養控除等申告書が出ていれば定額減税の対象にするとは思われますが、ぎりぎり103万を超えなかった従業員に対して定額減税を適用するべきなのかは迷います。一応ルールとしては年末調整をやった場合は給与103万を超えなかった場合、定額減税の控除はゼロ、控除外の金額を記載することになりますが2重取りになる可能性はないのか気になります。

このあたり自治体がチェックするのでしょうが、無茶苦茶大変そうだなと想像します。個人的には効果がイマイチで手間が膨大、ほとんど誰も得をしない、一番かわいそうなのは自治体の担当の方ですかね。同情します・・・。