続出する免税店摘発の理由

目次

1.続出する免税店への摘発

 少し前のニュースですが以下のような話がありました。

 「ブランド品の買い取り販売などを手掛ける「大黒屋」(東京都港区)が東京国税局の税務調査を受け、2023年3月期までの2年間で消費税約1億9000万円の申告漏れを指摘されたことが30日、関係者への取材で分かった。追徴税額は約2億3000万円に上るという。」(4月30日 時事通信)

 旅行者などにブランド品など販売する場合に消費税免税で販売できますが、これはこの旅行者が自国に持ち帰ることが前提、国内で転売することはできません。大黒屋の一部店舗では、従業員が外部業者と結託して国内転売と知ったうえで販売していたこともあり重加算税が課されることとなりました。

 似たような摘発が、昨年三越伊勢丹、大丸松坂屋などの大手百貨店でも、のきなみ行われ、追徴課税がなされました

 インバウンドの盛り上がりに伴う「爆買い」の一方で、免税店に対する国税の調査は強化されており、私の周りでも免税店の顧問税理士などからは結構「料調入って大変だよ」(東京国税庁資料調査課の調査、エース級の調査官が投入され厳しい調査で有名)などとぼやきをいくつか聞きました。

 さて、そもそもなぜこんなに免税店は国税から摘発されるのでしょうか?

2.免税店の税務処理

 皆さんも海外旅行に行った際、免税店で買い物をされたことはあると思います。そもそもなぜ免税なのでしょうか?これは消費税の考え方が「国内で消費されるものに対して課される税金」だからです。これは、国際的にも共通の認識です。したがって、免税店で買い物をして消費税が免税されるのは「日本国外で消費」が前提となります。

 そうすると免税店は消費税分だけ損をするのではと思われがちですが、免税商品の仕入れにかかった消費税分は還付できます。そのため、消費税という観点では免税店は得も損もしません。要するに免税店自体は販売後、その人が自国で消費しようが、国内で転売しようが経済的観点から全然問題がないことになります。

 ところが税務当局としてはそれでは消費税が徴収できず困ります。そこで、免税店の取引ですが、パスポート等で旅行者であることを確認し、購入記録情報を国税庁に遅滞なく電子送信する必要があります。

 化粧品・飲食料品類、薬品などの消耗品については転売対策かもしれませんが、同じ店舗での購入額が50万円以下という制限があります。また、開封されないような包装方法が求められます。そしてその他の一般品を含めて一店舗の購入額が合計5000円以上となっています

 ただ、ここで問題になってくるのが日本国内での転売ヤーです。非常に単純に考えて免税で購入して日本国内において消費税込みで売却すれば確実に消費税10%の利ザヤは最低抜くことができます。

 これを放置しておくと日本の消費税制度の抜け道になってしまいますので、国税庁としては大げさな言い方ですが国の威信をかけて臨んでいます。かなり強引な調査も行われているという噂はしばしば聞きますが、それが正当かどうかの意見は差し控えます。

 調査だけでなく法令でも免税店での取引について様々な見直しがされています。

3.免税販売の見直し

 令和4年の税制改正、より厳格な証明書類(国内居住者ではない)を求められ、証明書類の国税庁への送付または保存(7年間)が求められました。加えて、令和6年度税制改正においては免税品だと知って課税仕入をした場合の仕入れ税額控除の制限が定められました。

 古物商などの買取り業者は、免税店での取引で購入したと疑われるものを購入していた場合、その品物の仕入税額控除は否認するという規定です。かなり今までもこれに近いことが調査でも行われていたと聞きますが、法令の形でしっかりと根拠を作ったのでしょう。

 そもそも論として感じることですが、海外旅行などに行った際の免税品の購入においては空港の窓口に一連書類を持参して還付してもらうといった手続きを取っているケースが多いかと思います。これを行えば国内での転売は完全に根絶することができると思われます。

 やはり、同じようなことを考えている方は多いようで、空港での免税手続きに変えるということが令和6年度の税制改正大綱で定められました。おそらく令和7年度の税制改正での詳細な法改正になるのではないかと思われます。