残念な税理士の末路とニセ税理士
目次
1.困った税理士
私は地元の税理士会で綱紀監察関連の役職についています。この業務、税理士の品位保持に努めること、ニセ税理士対策、そして税理士が顧客等と起こすトラブルの後始末などです。ただ、何か強い処分権限があるわけでもないので、勧告や関係各所に連絡するといったことで終わりです。
税理士界も高齢化してきたので、ご高齢の会員が逝去されることが多くなりました。その際多いトラブルが、逝去等により廃業しているにもかかわらず「XX税理士事務所の看板を掲げている」「廃業したのに顧客の資料を抱えたままで返してくれない」といったものです。前者の場合、ひどい場合は「看板外すのにカネかかるから外してほしいならばお前がカネ払え」などと家族から言われ結局なんの権限もない悲哀を味わっています。後者の場合は「ハイハイ」とは返事はもらえるのですが、遺族も多分全然わからないのか単に面倒だからなのかよくわからないですが、進展はなくそのうち、こちらからの電話にも出なくなります。
残念でトホホなことですが、こういった事例、自分にもしものことがあったらどうするか?ということを考えた場合の他山の石的な良い教訓だとは思います。きちんと後継者がいたり、番頭さんみたいな方いたりする事務所は別ですが、私の事務所のように実質一人事務所やワンマン所長の事務所だとそうはいかないケースも多いでしょう。人々にご迷惑おかけしないようにそのあたり備えておきたいと思います。
2.ニセ税理士とは
税理士法第52条は「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。」とあります。そしてこの違反は第59条で「二年以下の懲役又は百万円以下の罰金」と刑事罰がなされるものです。
ここでいう税理士業務とは「税務代理」(税務申告を行う)「税務書類の作成」(申告書等の作成)、「税務相談」の3つです。この中で、注意しないといけないのは「有償で」という記載がないということです。親切のつもりで友人の申告書などを作成すること本来は税理士法違反です。ただ、当然たまたま頼まれてちょっと1回やったという程度は(望ましくないことかもしれませんが)誰も目くじらを立てないでしょう。ここで「ニセ税理士」として問題となるのは基本的には反復的継続的に行われている場合で以下のようなケースが多いです。
一つは、会計事務所の職員(税理士資格なし)が副業的にやる、または所長が亡くなったのでそのあとをこっそり引き継ぐといったパターンです。もう一つは、記帳代行会社が行うケース、決算までは記帳代行会社は問題なくできるのですが申告書作成は税理士しかできません。その際、税理士から名義を貸りて申告までやってしまうわけです。
あくまでも個人的見解(税理士会の見解とは全く無関係)ですが、正直こういったニセ税理士仕事ぶりまじめなケースも多く、ニセ医者と一緒で必ずしも評判が悪いわけではなく、私は節税商品を売り込む「節税屋さん」の方がはるかに害悪激しいと思います
3.節税屋さん
節税屋という商売はなく、自身の商品・サービスを売り込む際に節税をうたう人たちです。すごくわかりやすい例がアパートを使った相続税対策の節税屋さんたちです。たいてい不動産会社と金融機関の人たちでそこは組んでいます。不動産会社は建設費用とアパート管理費用、金融機関は貸付の利息で儲けます。不動産会社はリスクほぼゼロですし、金融機関は土地さえ値下がりしなければたとえ借入返済が滞ったとしても土地を処分して回収ができます。
アパートの大家さんは、確かに借入金が相続財産のマイナスとなり、アパートの敷地は50%評価減となるのでこちらも相続財産が減るので相続税は安くなるでしょう。しかし、相続税は安くなりますが、アパートに賃貸人が入らず借入金の返済>賃貸料となると大変です。カボチャの馬車問題(シェアハウスを建てるというスキームを提案したが入居者が集まらず破綻)などで表面化したのは氷山の一角でしょう。相続対策をした人は相続財産自体がなくなってしまうかもしれないというリスクが高めの仕組みです。
結構、こういった節税屋さんの話を聞きつけたお客様からの相談に悩まされている税理士の先生は多いようです。たいていは提案する会社が一番儲かるスキームでリスクはすべてお客様です。キチンと考えたのではなく安易な儲け話に乗ろうとしているケースが多いです。私の場合まだまだ若めの経営者が多いので、たいていは「同じリスク取るならばあなたの不慣れな節税ではなくご自身の知見のある本業でとったらいかがですか」と最初にお答えしています。
こういった節税スキームを売り込む人たち、これは明らかに「税務相談」に当たるのではと疑問を持ちます。この人たちこそ「ニセ税理士では」は?と国税局の担当官に実は直接意見をぶつけたこともありました。回答は「難しい問題です。今後検討必要ですね」といった官僚回答でいわゆるゼロ回答でした。 看板の問題と言い、「ニセ税理士」の問題と言い無力感は感じます。