こっそり入った暦年贈与の延長化のわな

目次

1.税制大綱が決まりました

 先日自民党税務調査会定めた令和5年度税制大綱が決定したとニュースになっていました。この税制大綱では与党(自民党)が各省庁の要望等を集め、翌年度の税制の大きな方針を定め、閣議決定した後、細かい法律を起草して翌年度から実行するというのが手続きの概要です。したがって、基本的にはここで大きな翌年度の新しい税制の枠組みがきまるといえます。

 あくまでも個人的感想ですが「大綱」という割には小粒な改正、それも前回のインボイス制度と電子帳簿保存法で見られるような小手先の取り繕いが多い気がします。

今回は暦年贈与の相続税加算の話です。

2.暦年贈与の相続税加算

 まず、暦年贈与とは何かという話です。これはご存じな方が多いとは思いますが暦年(1月1日から12月31日までの1年間)で贈与額が110万円以下であれば贈与税がかからないという仕組みです。ただし、実はこれには落とし穴あります。

 相続時から3年前までに贈与したものは相続財産に加算しなければならない、要するに相続税がかかります。これが今回の税制大綱で7年に延長されました。ただし、対象は令和6年1月1日以降の贈与、そして順次1年ずつ加算していく形です。もう少し詳しく見ます

 例えば5年12月31日に贈与してもこの年は3年間なので令和9年1月1日以降の相続の場合は加算しなくてよいです。逆に6年1月1日の贈与は、4年間になるので令和10年1月1日以降の相続の場合4年前になるので対象になり、相続財産に加算されます。令和11年1月1日以降相続だと5年前(1年加算)で対象になり、要するにちょうど7年目の令和13年1月1日の相続までは6年1月1日の贈与は相続財産に加算されるわけです。

 実はこれ税理士や相続人にとっても結構面倒です

3.面倒な7年延長

 相続税の申告をする際に、被相続人や相続人の預金通帳を最低3年分通査するということを税理士はやります。一つは名義預金で、親が子の名義などで預金しているケースあります。これは相続財産となります。結構相続人本人も知らないケースは多くきちんと預金通帳見ないといけないです。

 また、お亡くなりになる前にお金を相続人に移動したりする人がいますがこれも相続財産になってしまいますのでこのあたりもチェックします。そして、この暦年贈与に引っかかるものがないか、特に丸い数字のある程度まとまった金額はチェックします。

 ところが、この仕組みができると、今まで3年見ていたところを7年見ておかないといけないことになります。これは相続人にとってかなりの手間です。7年分の預金通帳などを取っている人あまり多くないので銀行から取り寄せないといけないです。見る側の税理士も正直かなり煩雑な作業になります。

 この意図は早期の贈与を促して、若い世代の経済活力をつけようという事らしいですが、本当でしょうか?ある程度以上のお金持ち以外は生前贈与なんて考えないと思います。そしてお金持ちは税理士などを使って巧みに相続対策を行います。

 これで泣きを見るのは中流~中流やや上くらいの人でしょう。こんな制度ができたのを知らずにいざ相続の時に7年分の贈与がおじゃんになるわけです。なぜかいつもこの辺りの層が一番狙われて、ちまちま税金取られているような気がするのは気のせいでしょうか?