財務省担当官に聞いたインボイス制度の小ネタ

目次

1.担当官に聞くインボイス制度の疑問

 ここ数回の税務通信(主として税理士向けの専門誌)で連載されていた財務省担当官にきくインボイス制度の疑問点、なかなか面白く興味深く読ませていただきました。実は今までお役所の方のインタビュー記事は建前的な話が多くて退屈であまり読んだことがありませんでした。

 今回は対談形式ということもありますが、出席された財務省主税局課長補佐の佐々木氏、おそらく見た目の若さからキャリア官僚の方と思われますが、コメントがシャープでわりと本音ベースで話されました。非常にありがたいことです。加えて、そこに消費税では高名な金井先生と司会が石井先生、なかなか良いメンバーだったこともあるでしょう。

 もしかすると一般の方からするとくだらないことで税理士も悩んでいると感じるかもしれませんが
やはりもしもの事があって顧問先にご迷惑かけたらと思うといろいろと新しい制度が入ると悩むことは多いです。

その一つとして登録番号のチェックがあります

2.登録番号の確認どうする

 国税庁から出されている文書を読むと適格請求書登録事業者はWebサイトに載っているので確認するようにと感じる方が多いと思われます。仕入税額控除の条件としてインボイスの保存が求められている一方、誤ったの登録番号が載っているインボイスは仕入税額控除の条件を満たさないのではないかということです。

これについては私も同感するのですが、担当官も登録番号の記載の有無の確認は必要ですが、明らかに変(桁数が違うとか)なものを除けば、一枚一枚確認する必要はないのではとおっしゃっています。私も、さっと請求書の登録番号の有無は確認の必要がありますが、その番号の真正性は初めての取引で高額の場合くらいでよいのではと思います。

 ただ、事前の確認、特に免税事業者との取引については確認したほうが良いのではとおっしゃっています。免税事業者については仕入れ税額控除の要件をみたすインボイスは発行できません。したがって、事前に適格請求書発行事業者の登録をするかの確認はしたほうが良いと思われます

一方、課税事業者の相手に対し適格請求書発行事業者の登録の有無を事前に確認する必要があるかというとこれはないでしょう。ただ、金井先生がおっしゃっていた主要取引先には適格請求書発行事業者として登録しましたといったような通知を送るのは気が利いていてよいアイディアと思いました 

3.3万円未満の請求書問題

 以前は消費税法上は仕入税額控除(売上の消費税から控除する)要件としては請求書等の保存は求められず帳簿への記載だけで済んでいました。しかし、今回のインボイス制度後は少額の請求書等も保存が求められます。

 ただ、法人税や所得税で請求書等の保存が必要ないという規定はないので、税理士でも少額の請求書なんて取っておかなくていいですよなんて指導する方は多分いなかったと思います。たまたまなかった請求書等の救済措置(いちいちそれを必死に探すのは非効率)という程度にとらえている方が
多いはのではないでしょうか。

 また、この背景の一つとして免税事業者との取引をあがていましたがこれは盲点でした。3万円未満だったら帳簿のみの記載ですからから極端な話、免税事業者の取引でも3万円未満であれば100%仕入税額控除できてしまいます。すると免税事業者については3万円未満に分けて請求書を出せなんて変な実務ができてしまいます。これは確かに変な実務です。

 やはり新しい税法を作成する担当官の方はいろいろなケースを深く考えられているのだなとある程度感嘆しつつ、そのため税法がわかりにくい複雑なものになるという点にもため息をついたところではあります。