長時間労働の1つの要因について
政府が昨日経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」の素案と「ニッポン1億総活躍プラン」をまとめました。この中の働き方改革として労働基準監督者署の立ち入り基準を残業時間月100時間から80時間以下に引き下げる対策をたてるようです。具体的にいうと36協定の特別条項で80時間を超える時間で協定していると、立ち入り調査の対象になるというものです。簡単にいうと本来、週40時間までしか労働基準法では働けないのですが36協定を結べば45時間まで、特別条項では上限なしで残業してもらうことができます。政府としてやれるのは限界があると思うのですが、真面目に36協定を守っている会社がどれだけあるか疑問な状況では実効性はほぼないと思われます。
私は「長時間労働する」こと自体は本人の自由である限り問題ではないと思っています。しかし、「長時間働かさせられる」のは問題であり、やはり「働かされる人」の健康を蝕むものだと思っているます。従業員の「長時間働かされる」理由の一つとして経営者(または経営陣)の考え方があげられます。よく「お客様は神様」という言葉がありますが「悪魔」な顧客もあります。「悪魔」の顧客はとにかく安い料金を要求する一方、品質・納期などの要求は理不尽なくらいうるさいのでこのような顧客に対する対応が長時間労働の1つの大きな原因となっていると思います。経営者の社員が働く時間・手間に対するコスト感覚が鋭敏であればこのような顧客はお断りしていくはずです。しかし、いまだに中小企業も大企業も売上至上主義でこのような実は採算の合わない顧客を断る、いわゆる「断る力」がありません。
いまだにベンダーは搾り取ればいいんだというような態度の顧客は少なからずいますが、長期的にみるとこのような顧客は栄えません。以前ある顧客の役員の方とゴルフを終わったあとクラブハウスで軽食を食べていたところ彼の携帯がなりました。そこからは私にも聞こえるくらいの罵声が聞こえます。どうやらその会社の納入した機械をいれたラインの調子が悪いようで先方のS社からのクレームのようでした。S社はちょっとでも問題が生じると休日の真夜中でもすぐ呼びつけることで有名でした。その会社の機械固有の原因のケースもあるのですが必ずしもそれだけが原因でないことも少なからずあったようです。当然製造業にとってラインが止まるのは大きな問題なのである程度仕方ないのですが、まともな会社は原因を調べてその会社の機械の問題であって緊急であれば当然呼びますが、そうでなければ簡単に呼びつけません。また、少なくともいきなり罵声を浴びせるようなことはありません。S社は以前は超優良企業でしたが、経営不振が続きついには最近海外企業に買収されてしまいました。
経営者にとって顧客を断るというのは難しい決断ですが、大切な仕事です。よく日本企業は欧米企業にくらべて労働時間が長いと言われます。別に欧米企業は従業員にやさしいのではなく、顧客別利益をきちんと管理して採算を冷徹に判断して合わない顧客はきっちりと断っているだけです。日本企業は長期志向と言われますが、このような点については超短期志向で目先の売上に拘泥して従業員を疲弊させてしまいます。これは私のような零細自営業も同じで「断る力」は将来の成長のためには絶対に必要だと思います。