非正規と正社員の差異解消が生み出すもの
政府が非正規雇用の待遇を改善するため、仕事の習熟度や技能といった「熟練度」を賃金に反映させるように法改正する方向という記事が日本経済新聞に載っていました。非正規社員と正社員の間に賃金格差を設ける際に、現行法では派遣社員には定めがなく、パートや有期雇用は「業務の内容」「責任の程度」「配置の変更の範囲」を考慮することになっていますが、習熟度、技能、勤続年数といった「熟練度」を賃金に反映する仕組みはありません。したがって、一般的には年齢が高くなれば正社員と非正規社員の賃金格差が高くなっていたようです。
ただ、ここで仮定となっている一つは「勤続年数」が長ければ「習熟度」が高いということです。年功序列が次第に崩れていることに企業側に余裕がなくなってきたこともありますが、実際勤続年数が長くても「習熟度」には大きな個人差があることもあります。また特にホワイトカラーの職場で習熟度や技能の測定は決して易しくありません。技術の変化により古い技能がすぐ陳腐化したりします。欧米企業は年功給的な要素が皆無ではないですが、同じ仕事を長くやっている人の賃金が自動的に上がっていく仕組みはありません。日本企業は厳しくなっていても、やはり年配社員には「課長代理」とかそれなりの肩書を与えて多少賃金的には報いている会社がまだまだ主流かと思います。
シビアに非正規も同様に処遇することになると、年配社員で本来会社が思っている「習熟度」と本人の賃金に差異があればその分は(労働法規上可能であるかは別にして)下げざるを得ないというのが現実でしょう。非正規の賃上げを単純に行うとは思われません。落としどころは正規の社員の賃金を下げて非正規が上がりどこかに均衡点が生ずるといったことでしょうか?常に新しい技術や仕事のやり方を自分で見極めて常に学習していかないと賃金が全く上がらない時代がやってくるのかもしれません。