こっそり始まった消費税益税つぶし
平成28年税制大綱によりインボイス制度が平成33年度から導入されることになりました。簡単にいうと、これにより消費税の控除をするにあたって異なる消費税率ごとに区分したインボイスをサプライヤーに発行してもらう必要があります。この際、免税事業者はインボイスを発行できませんから免税業者からの仕入れは消費税の控除ができません。一方、免税事業者は今まで消費税を加えた金額を請求している一方、消費税を納税していなかったのでそこで益税が生じていました。インボイス制度導入により3年間の移行期間があるとしても実質的にはこの免税事業者制度はなくなります。日本経済新聞などに例が載っていましたがタクシー利用の場合、大手法人ですとインボイスが発行されますから企業の社員は経費精算できますが、個人タクシー(年間売上1千万以下の)だとインボイスが発行できないから経理部門に経費精算を拒否される可能性が出てくるわけです。そのため免税事業者は取引から排除されてしまうので課税事業者を選択するようになるのではないでしょうか。
別にこの案自体に反対なわけではないのですが、日頃零細事業者の保護を声高に訴える方々からの反対の声が上がらないのは不思議な感じがします。消費税は簡単にいうと、もらった消費税から支払った消費税を差し引いて納入する制度なので別に損得はなく、そこに益税が生じるのはもともと不合理なことです。したがって、免税や簡易課税といった不合理な方法はこの機に整理される方が望ましいと思われます。ただ、このようなこっそりとした益税つぶしだと将来「零細業者の保護」のため、つぶされそうです。