信越化学のROEはなぜ低い
今朝の日本経済新聞で信越化学工業が会社研究で取り上げられていました。就職ランキングなどでも上がってこないあまり目立たない会社ですが日本を代表する優良企業です。ただ、ROE(株主資本利益率)が7%というのは非常に意外に感じました。優良企業はたいてい2ケタのイメージが強く同じ化学業界でも東ソーなどは24.5%です。またアメリカのデユポンなども24%近いROEです。
非常に単純ですがデュポンとROEの中身を比べてみました。いわゆる収益マージン(純利益÷売上)、財務レバレッジ(総資産÷株主資本)、売上高回転率(売上高÷総資産)の分解です。収益マージンは信越9.5%、デュポン10.9%とややデュポンの方が収益性が高いですが大きな違いではありません。売上高回転率も信越0.59、デュポン0.56と資産の活用度もほぼ同様です。一方で財務レバレッジは信越1.2、デュポン3.8と大きく引き離されています。つまりよく言えば信越化学は分厚い自己資本で安定的な経営をしていますが、悪くいうと株主から調達した資金を効率的に使用していないということです。一時期自社株買いブームがROEを上げる手段として日本企業で流行りましたが信越化学はそのような動きからは一線置いているようです。
私の考えとしては短期的に財務レバレッジの部分をいじってROEをよく見せる動きに対しては批判的です。ただし上場企業であり株主資本の効率的な運用は重要だと思うので長期的に現状維持は望ましくないと思います。ただ、いざとなったら大胆な投資も行っている会社なのでそのあたりは信頼がおけるのではないでしょうか。