東芝事件で監査法人は訴えられるか?
東芝の不正会計問題で会社側は西田元社長等旧経営陣を訴えるようです。株主から会社に書面をもって取締役の責任を追及する旨要請があった場合、会社は60日以内にその取締役に対し、訴訟を提起しなければなりません。そこで、会社側としても会社法の規定に従って粛々と手続きを進めているようです。
この訴訟に関しては第三者委員会の不正調査の仮定でフォレンジック(デジタル鑑識で立てば消したメールのデータを復元したりする)などの手法を使いメールなどの証拠があります。一方監査法人に関しては株主は金商法に基づく訴訟を提起することになると思われます。一般的な民法709条に基づく損害賠償はさまざまな立証責任が訴える側にあるのでハードルは高いと思われます。一方、金商法に基づく訴訟の場合、監査法人は東芝の適正意見の監査証明をするにあたって故意または過失がなかったことを立証しなければないません。ただし、取締役に対するやり取りや書面などが社内にあるのに対し、重要な証拠である監査調書は監査法人側にあるので難易度は高くなります。
したがって、監査法人は民事というよりも金融庁による行政罰の可能性の方が高いと思われます。金融庁の検査においては監査調書なども開示しなければならないわけですから。内輪でなあなあで済ませると思われるかもしれませんが個人的には公認会計士協会などを中心に会計士の自浄作用が働いてほしいと思われます。偏見かもしれませんが行政の介入があると規制が強化され、やたらと無意味な書面作成が増えるだけというのは様々な業界の方が経験されてきたことだと思われます。
かつての監査法人は合併を繰り返してきたので、政治力のある古い会計士の下、一種のその会計士の下の部屋制で他の会計士は案件に口を出せないといった傾向がありました。近年の改革でほぼ大手では一掃されましたが新日本監査法人では一部そのような勢力が残存していて東芝を担当していたグループは排他性があったという意見が私の友人たちではありました。ガバナンスの欠如だったというわけです。審査など他の部署がチェックする仕組みはあるので機能していなかったかもしれません。