塾産業の囲い込みはうまくいくか?
塾産業の囲い込みがどんどん過熱化しているようです。2つの囲い込みがあり、一つは中学受験からの囲い込みでどんどん大学受験「東進ハイスクール」を運営しているナガセが中学受験の四谷大塚を買収、大学受験「代々木ゼミナール」を運営している高宮学園が中学受験のSAPIXを買収しています。子供を商品とするといわゆる垂直統合になるでしょう。もう一つが中学受験の中での囲い込みで低学年は授業料を安くして生徒を集めて、受験直前の6年生は高い授業料と「特訓コース」などさまざまなオプションをつけて回収するモデルです。
日経の記事では早稲田アカデミーの小学4年生の夏合宿が掲載されていました。小学4年だったら塾の合宿より自然の中でキャンプでもしてほしいと個人的には思いますが、「合宿」というのはビジネス的には面白いアイディアだと思います。「合宿」のいいところは友達ができやすいところで、いい勉強仲間ができると子供の励みになります。ただ、ここでのビジネス上のポイントは子供が友達がいるために塾に愛着をもち、いわゆるスイッチングコスト(代えるためのコスト)が高くなる点です。親が他の塾が良いと思っても子供が代わりたがらず、親も子供が嫌がるのに塾を代えれば成績が落ちるのではと心配するわけです。塾としては儲け時の6年生で他塾に転出というのは好ましくないシナリオなのでこの確率が下がるのは望ましいです。
一方中学受験から大学受験までの垂直統合により囲い込むのはどれだけ効果があるのかは不明です。製造業の垂直統合では製品は自社の所有物ですが、塾の生徒は別に所有物ではありません。受験の途中でのスイッチングコストは高い可能性はありますが、小学校→中学→高校といった変り目のスイッチングコストはあまり高くない気はします。別に小学校と中学で違う塾に行くのは普通にあります。このあたりの効果の検証を見てみたいですね。