東芝と工事進行基準ー不可解な先送り

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東芝問題が新聞紙面や株式市場をにぎわしています。数か月前、東芝不適正会計問題が小さくニュースに載ったころ機関投資家や、ヘッジファンドなどの知人から問い合わせを受けました。その際、大手弁護士事務所と大手監査法人を第三者委員会に選定していることからなんとなく組織ぐるみの可能性が高く、問題は大きくなる可能性大と申し上げていましたがその通りになり、感謝のメールをいただきました。

さて、日経の記事で「工事進行基準で損失先送り」と書かれていました。工事進行基準とはたとえば以下のような感じです。3年後完成の80億円の工事で当初費用が60億かかると見積もっていて、1年目費用が30億かかったとしたら、2分の1(30億÷60億)工事が完了したと見積もって、売上40億(90億÷2)と費用30億を認識するものです。この設例で実は工事費用が90億かかることがわかったものの隠蔽していたとしましょう。2年目は費用を先送りして20億にとどめてると2年目は売上26.7億で費用は20億です。しかし3年目は工事が完成してしまうのでかかった費用は全部認識しなくてはいけないので売上13.3億、費用40億で一気に損が露見します。要するに永遠に損失を先送りすることはできません。

ではどうすればよいか、一つの想像として費用の付け替えがあります。この工事の費用を他のまだ進行中の工事に付け替えてしまいます。するとこの工事でいう20億余分にかかった費用は他の始まったばかりの工事などに振り替えられるわけです。当然このような行為が常態化すると雪だるまのように損失は膨らんできます。

ただ、内部統制などで工事進行基準で費用の付け替えができないような仕組みはできているはずですし、監査で付け替えができない仕組みであることはテストされているはずです。東芝が会社ぐるみで監査法人を欺く仕組みを作ったのか(本気で組織ぐるみでやられたら多分監査法人は見抜けません)、監査がずさんだったたかどちらかでしょう。東芝は日本を代表する素晴らしい会社だと思っていましたし、監査法人が叩かれるのは同業者として気持ちがよくないし、どちらも見たくない結末です。