税金考 -国税不敗神話は崩れたか?(IBM申告漏れ事件)

日本経済新聞で「税金考」が連載されていて興味深く読んでいます。今回は国税の不敗神話が崩れつつあるという話でした。ただ、平成25年までの国税の敗訴率は公表されていますが相変わらず1ケタ代で、たまたまIBMやホンダなどの目立つ案件で国税が敗訴しただけで正直言って特に不敗神話が崩れたという感はありません。しかし、少しずつ国税の立証責任が厳密に要求されるようになったという感はあります。

kokuzei

私の理解では国税は法人税法132条1の同族会社の行為計算の否認を適用しました。平たくいうと「親子会社関係であったり、個人が支配している会社間の取引は比較的自由に設定できるので、国税は税金を逃れるための不自然な取引を否定して合理的再計算をすることができる」という包括規程と呼ばれるものです。わりに昔は裁判所も国税の判断の裁量を広範囲に認めていた感がありますがだんだん国税側の立証責任が厳密に求められてきた感はあります。ここではIBMのスキームの経済合理性が不合理であるとの立証において国税の踏み込みが弱かったというのが大方のざっくりとした見方のようです。このあたり、仲間と勉強会をして議論を深める予定です。

この手のスキームは1990年代からありましたが、かなりあざとくIBMは利用した感は強く、あくまで個人的な感想ですが、まぁ租税回避の意図だろうと直観的には思います。しかし、いままであまりにも国税の裁量権を広く認めた判決が多くそういった意味では妥当かもしれません。国税も(私の顧問先のような小さな会社の)真面目な経済行為に包括規程をきわめて主観的に当てはめて課税することに力を注ぐより、このような案件の綿密な立証・理論立てに力を注いでほしいものです。