資金調達したくなった時考えること
目次
1.出資を募りたい
仕事がらを募って自分の事業を大きくしたいのだけど・・・という相談を受けます。別にそれ自体がダメというわけではないですが、理由を聞くと借入は難しそうとか、借りたお金を返せるかどうかやや不安だからなどがその理由なようです。確かにバイオベンチャーの研究開発型などでお金を投下してからある程度生み出すまで時間のかかるものや、ITのプラットフォーム型で一定の顧客数を確保するまで必然的にキャッシュフロ―がマイナスになりやすい業種はそれ以外の選択肢はせいぜい補助金くらいしかないかもしれません。逆にこの手のビジネスは「夢を売れる」ので赤字でも後で詳しく話しますが事業価値も高くつけることは可能かもしれません。
たまに、エンジェルとか知り合いにいませんかなどと聞かれるのですが、(私の人脈が単に乏しいせいかもしれませんが)おおむね数百万台の出資で数千万から億単位を簡単に出してくれる方は知りません。「エンジェル」というと困ってくれる人を助けてくれる天使のような存在だと思うかもしれませんが、私のイメージだと元ベンチャー経営者や元ファンドの運営者などが多く、ある程度社会的意義なども考慮には入れる方はいますが、シビアな面もあり結局は投資であるため「はずれそうな馬券」や「オッズが低そうな馬券」のような案件には一般的には投資してくれません。
前にも述べたような特別な業種を除けば、創業や創業から間もない企業の支援について政策金融公庫や保証協会などの公的機関のサポートは、私から見ると「甘いんじゃない」とも思うくらい借手に好意的で、借入とはいえ資金調達はそんなにハードルは高くありません。このあたりの融資も通らないようなしょぼい事業計画だとエンジェル投資などはほぼ無理だと思います。
2.投資家の人たち -VC
数千万から億程度の資金を調達するのならば出し手はVC(ベンチャーキャピタル)か事業会社となります。VCには金融機関などの系列、事業会社などの系列、そして独立系があります。多少偏見はあるかもしれませんが、金融機関系のVCは担当者はサラリーマンが多く横並び志向、「他社が出せばうちも出します・・・」といったイメージが強いです。多額の資金が必要な際は確かに刺身のツマ的には役に立ちますがメインにはならない感じです。
独立系VCは玉石混交で確かに経験豊富で販路拡大や財務戦略など本当に助けてくれるところと、悪い意味でのMBA出身的に「あるべき論」だけ頭でっかちに口出してくるところがあり、あたりはずれはかなりあるのではあるのではないでしょうか?いい例だと米国でこんまりさんが活躍したのにはシリコンバレーのVCのサポートがあったと聞きます。
事業会社のVC(コーポレートVC)の場合、その事業会社がベンチャーだと割と独立系VCに近く、大企業だとここでいう金融系に近いかほぼ事業会社の投資に近いかだといえるでしょう。では事業会社の投資について考えてみます。
3.事業会社の投資
大きく分けるとWin-Win型と搾取型があると思います。事業会社の投資の意図としてはベンチャーを育てるという意図が強い投資です。大企業ならではの信用力を生かしてベンチャー顧客開拓をしてくれたり弱い部分を補ったりしよう、そして、ベンチャーならでのアイディアをもらって一緒にビジネスを発展させようというものです。ベンチャーにとってはありがたい投資家です。ただ、いい面ばかりではなくいわゆる「大企業」だとすべてにわたって意思決定や行動が遅く帰って事業に支障になることもあります。一方オーナー系だとこのあたりどんどんスピード感あってやってくれるので、そのオーナーが信頼できる方ならばオーナー系が一般的にはお勧めです。
一方気を付けないといけないのは搾取型です。投資したことをきっかけに役員や社員を送り込んでノウハウを盗むタイプです。100%最初からこのような意図でやっている会社があるかは不明ですが、しばしば投資先に類似の商品やサービスを出されたという話はちょくちょく小耳にはさみます。
加えて、上記に重なる部分はあるのですが最終的には自分のビジネスにしようとして投資する会社もあります。GAFAなどはそうで自分の投資先で魅力あるビジネスであれば最終的には100%子会社にしてしまいます。GAFAなどは様々な記事で見る限り割とWin-WIn型で育てて、きちんと評価して買収してくれるので出口としては決して悪い先ではないかもしれません。
4.出資してもらうのに必要なこと
私は投資してもらうのに必要なものは事業計画と資本政策の2つと思っています。事業計画については割と皆考えているのですが、特に創業してから若めの企業であまり資本政策について考えていない会社が多いです。資本の論理というのは残酷で、ある意味相手側に過半数の議決権を握られてしまったらあなたを会社から追い出すのは難しくありません。1億の投資でその際のあなたの会社の価値が1億であれば50%の株式を握られてしまいますが、9億であればわずか10%だけです。このあたり考えて株式の割り当てを考えていかないといけません。特に会社の価値が低いときに簡単に出資してもらうとあとあと非常に苦労することになります。
加えて、この資本政策についてはExit(出口)が投資家にとっては大切です。投資する人は最終的にはどこかのタイミングであなたの会社の株式を一部または全部売って利益を得ることになります。どのタイミングで売却できて、どの程度彼らにキャッシュが入るか夢は見せなければならないでしょう。
一方、投資家に見せる事業計画はこの例でいうとあなたの会社に1億ではなく9億の価値があることを潜在投資家に納得してもらうための資料です。ある意味前述したように夢売ること大切です。高いコンサル会社などに頼んでファンシーな計画書を作成する会社もありますが、上場がかなり近づいてきたレイトスレージはともかく、まだ初期の段階であれば見せかけのファンシーさよりも、あなたの会社の事業価値の裏付けをきっちりとできるだけ論理的に、かつ共感をえる(夢を売る)ような形で見せることの方がはるかに大切だと思います。このあたりコンサル会社に丸投げではどんなにそのコンサル会社が優秀でも無理なわけで、かなりあなた自身の関与が大切だと思われます。