事業資金(創業資金)を借りたくなったら読むお話

目次

1.お金を借りることは悪か?

 もしかすると皆さんの中には親の遺言で借金は一切するなという方いるかもしれません。当然何の計画性もなく、ただお金が足りなくなったから借りるというのは勧めませんが、事業では投資するということがあり、これの借入は必要です。ここでいう投資とは建物や機械・備品などの固定資産だけではなく、まとまったお金を使うけど使ったお金以上の金銭的見返りがあることを指します。

 使ったお金以上の見返りがあるわけですから、言い換えれば借りたお金を返してまだあまりがあるわけですから、手元にそのお金がなければ借りたほうがいいわけです。業種にもよりますが、一般的にはある程度の成長を目指すためにはお金を借りるというのはさけて通れないものです。

 ここでは初めてお金を借りる、または借入初心者のお話しです。大きく分けると初めての方は制度融資と日本政策金融公庫が入門編といえます。

2.制度融資とは何か
 

 制度融資とは市区町村や都道府県で中小零細企業にお金を貸してくれる制度です。ただし、実際に貸すのは銀行や信用金庫などの金融機関で保証協会という公的機関が保証をしてくれるので貸してくれるわけです。80%~100%の保証で創業の場合は100%保証なので金融機関も、これから創業する人でもとりっぱぐれがないので貸してくれることが多いわけです。

 欠点は当然お役所が絡むのでたくさん書類を結構面倒、加えて金融機関が審査をしたうえ、また保証協会が審査と時間と労力はかかります。また金利に加えて保証協会の保証料がかかります。

 一方利点としては金利については安いことが多く、欠点として挙げた保証料も自治体によってはかなり補助が出て安くなり、結局金利+保証料がほとんどかからないケースもあります。また、特に創業時などは創業セミナーに参加させてくれたり、いろいろなアドバイスを公的機関からもらえたりします。わりと書類仕事が苦にならず時間的にも余裕のある方はお勧めです。

3.日本政策金融公庫

 日本政策金融公庫は国の機関で中小零細企業の融資に特化した機関です。創業融資や初めての金融機関取引の方も前向きに取り組んでくれます。
金利も比較的安めで、保証協会を通しませんので保証料もかかりません。制度融資に比べると書類等少なく、手続きも早いです。

 ただし、制度融資の場合は、いろいろと事業計画の作り方の指導など紹介してれますが、政策公庫の場合は一般的に事業計画など必要書類は自分の力でつくらなければならないです。ただ、事業計画の書き方などは割と丁寧にウェブサイトに載っていますので数字に強い方、税務顧問がいて指導がもらえる方などはほぼ問題がないかと思われます。

4.公的機関 -融資審査厳しくないの?

 昔は事業計画や決算書などで不審な事項があると結構厳しかったです。債務超過(損失がたまり資本金等を食いつぶしている状態)など決算の内容が悪いとよほど打開策などがきちんとしていないと審査は通らなかったと思います。事業計画もきちんとした具体性が求められていました。

 私も昔政策金融公庫(当時は国民金融公庫でした)勤務時代に当時の上司から「貸すも親切貸さぬも親切」と言われていました。私は至言だと思います。先が見えない企業や成功の確率が非常に低い事業にお金を貸してもその人の借金が増えるだけです。ざっくりのイメージで5分5分だったら貸すけど、それ以下だとかなり難しいといった感じだったでしょう

 ところが現在は、よく言えばこういった公的機関は金融機関<中小零細企業支援になっています。金融機関は「性悪説」で疑ってかかりますが、そういった姿勢はかなり薄まりました。決算数値が多少怪しくてもある程度は目をつぶってくれますし、事業計画の具体性・実現性も好意的に見てくれます。経営成績・財政状態がかなり悪くてもそれなりのリカバリープランがあれば大丈夫ですし、高額なでも担保とかも要求しないケースは多いです。

 こんな中でもお断りされるパターンはこんな感じでしょう。全く経験ない分野への思い付き的創業や新規事業進出、資金使途が明らかに怪しい(新しい事務所を借りるのに契約がない・・・とか)貯金がゼロで開業(または丸い金額でいきなりの振り込みがある)事業計画があまりにもずさんで実現性が全くないといったところでしょう。

5.より融資を確実にするには

 顧問税理士を通しての申し込みというのは確実性を高めます。きちんと税理士が支援している先だということで金融機関や公的機関等の信用が高くなります。かつ先方も信頼のおける税理士の情報を持っているので、(数は非常に少ないと思われますが)逆に悪徳税理士のレッテルを貼られているとマイナスです。現状決算数値・事業計画等、融資前に中身を(まともな)税理士と検討していれば、ほぼ100%公的機関を利用した融資は通るような状況でしょう。

 手前味噌ですが私も今のところ大幅債務超過の顧問先も含め100%融資承認です。その代わり延滞も今のところゼロで、信用を保つためにも気を付けています。

 まとめると、結構中小零細の国や自治体の金融支援充実しているので必要な際はお金を借りて事業を成長させる、立て直すというのは大切だし積極的にやってよいと思います。

 逆に大手銀行など民間金融機関の提案で借りるのはまずNGです。金融商品などの財テク、事業承継対策、不要不急の資産購入提案してきますが大抵ノルマ消化が目的であなたのための提案でないケースがほとんどです。たまに大手銀行の方が提案してくれたと喜んでいる方いらっしゃいますが大きな間違えのケースが多いです。特にメガバンクや大手地方銀行であれば大企業以外は「売れ残り商品」を持ってくるケースが多いので気を付けましょう。