起業家が資金調達で気を付けなくてはならない3つのこと

 

 

目次

1.起業家にとって資金調達が楽な時代

 

 今日から令和が始まりました。世の中の大半は大型連休真っ盛りだと思われますが、私の場合3月決算の法人は結構ありますので決算監査で今日もお客様のところに普通通り参ります。令和元年初仕事ではありますので新たな気分で向かいたいと思います。平成時代私が残念だと持ったのは昭和の時代のソニーやホンダのような世界的ベンチャー企業が生まれなかったことでしょう。ただ、米国に比べ薄いとはいえベンチャーファイナンスは随分起業家にとって厚みが出てきました。起業から間もないアーリーステージでも投資してくれるエンジェル投資家も随分現れましたし、金融機関も随分創業または創業間もない企業に貸し付けるようになってきました。大きく成長するためのファイナンス的な支援は随分良くなってきていると思います。しかし、それだけに気を付けなければならないことが3つあります。

 

2.お金はたくさんあった方がよいか?

 

 シリアルアントレプレナー(連続して起業して成功している方)やベンチャー企業での経験豊かなCFO(最高財務責任者)がいる場合は別ですが大抵起業家が分不相応なお金が調達できると失敗します。私のところにも分不相応のお金をあっという間に使い尽くして困窮して飛び込んでくる経営者の方いらっしゃいます。前も簡単に調達できたので今度も大丈夫だろうと思っているようですが世の中そんなに甘くありません。前の調達資金をどのように使って自社の成長に役立てたかはきちんと投資家や銀行は見ますから、無駄に使って使い尽くすような企業の再調達は非常にハードル高くなります。

 やはりお金を持っている方のところには様々な営業提案がやってきます。「お金の匂い」をかぎつけてくる方々ですからその内容も玉石混交です。しかし、往々にして美辞麗句に乗って気前よく分不相応なお金の使い方をします。例としては豪華なオフィス、やたらと豪華できれいなだけで内容のないパンフレットやウェブサイト、よくわからないコンサルティングや様々な団体への高額な会費など、製造業だと無駄に高機能で高額な機器などがこれに加わります。使い道のない大金(安全を保つための資金は除く)を調達しないというのはまず1つです。

 

3.銀行は信じてよいか?

 昭和の時代から平成の初めくらいまでは自分の見込んだ担当企業のために上司や本部とやりあうといった「サムライ」銀行員は存在しましたが現在はほぼ死滅して「サラリーマン」銀行員ばかりになりました。「サラリーマン」の特徴は顧客第一ではなく銀行の目標達成第一なことです。銀行からの借入の提案はあなたの必要タイミングではなく、銀行の目標の達成に必要なタイミングであるケース多いです。残念ながら「半沢直樹」はドラマの中でしか存在しません。銀行員という方々は基本的には真面目な方は多いのですが基本的にお仕事は上司や本部の方を向いています。したがって、借入の提案であったりその他提案があってもあなたの役に立つ提案ではなく、支店や本部のノルマの達成に役立つものである可能性は高いです。

 我々の親の世代であれば「銀行員の言うことであれば間違えない」と思っている経営者の方少なからずいらっしゃいましたが、今は彼らの言いなりは危険です。提案に乗って安易な借り入れやスキームを作ってしまい、問題になったころには銀行の担当は転勤していないという悲劇は何度かみました。

 別に大多数の銀行員は積極的にあなたをだまそうとはしませんが、別に顧客本位の提案をしているわけではないですから、是々非々でたまたまあなたの役に立つ提案でしたらお受けして、そうでなければ丁重に(すまなそうに)お断わりすることでしょう。無理に銀行員のために提案を受け入れても「サラリーマン」なので現場に権限はほとんどなく、見返りはまずありません。ただ、人と人とのお付き合いでもあるので無礼、冷笑的な態度でお断りするのは止めた方がいいです。

 

4.投資家とどう付き合うか

 創業間もないアーリーステージで出資してくれるというのはありがたいものです。しかし、エンジェル投資家の中には本当に「エンジェル」でほぼ寄付感覚でお付き合いしてくださる奇特な方もいらっしゃるかもしれませんが、大多数は当然見返りを求めてのものです。アーリーステージの特徴は投資家にとってリスクもありますがその分少ない金額で大きなリターンの可能性があります。投資家は5千万の出資でもアーリーステージの企業価値が5千万程度しかない状況ですと50%の支配権(5千万÷(5千万+5千万)=50%)を握れますが、企業価値が5億ですと(5千万÷(5億+5千万))10%以下です。要するに少ない金額であなたの会社の支配権を多く握られてリターンもかなりの部分もっていかれます。このあたりこういった資本政策をよく考えてどの程度外部株主に支配権を渡すか検討しないと単なる自分の会社の安売りになってしまいます。このあたりベンチャー企業での経験豊富なCFO経験者などに意見を聞くことが必要でしょう

 加えてよく読まないと出資契約に買戻し条項(一定のターゲット達成できなかったら買い戻しする)など起業家に不利な条項が入っていることもありますのでベンチャーファイナンスの得意な弁護士などに相談することをお勧めします。あまり考えないで出資に応じると株主間の勢力争いや経営陣と株主の対立など余分なエネルギーを使うことが多くなったり、たとえ上場できたとしても上場当初から安定株主もいない不安定な会社になったりする可能性も多々あります。

 要するに投資してくれるという話に安易に乗ってしまうのも危険だということです。以上のように資金調達が以前よりも容易になったといっても別にそれはそれで結構落とし穴は多いので気を付ける必要があるわけです。

 

 

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