富士ゼロックスの不正会計 -会計処理の面から
富士ゼロックスの第三者委員会の報告書の概要に目を通しました。本来は原文に目を通すべきですが、恥ずかしながらまだ見れていませんが非常に興味深いと絶賛されている方もいるようなので専門家としては是非目を通しておきたいものです。とりあえず手口としては非常に単純でなぜ内部通報があるまで外部・内部を含む監査で発見できなかったのか不思議なことです。
簡単にいうとコピー機をリースで販売した時、条件を満たせばほぼ「コピー機」の販売として販売代金まるまる売上に計上できます。この条件とは「売上に計上した代金を利子込みでほぼ回収できる」ことです。毎月の回収代金の中にはこの本体の代金の回収の他にコピー用紙やトナーなどの消耗品や保守管理費、金利などが混在していますから、本体の回収はできていると見せかけていたと想像されます。ただし、以下の2点から発見できた可能性は高いと推測されます。
まず、内部監査や外部監査でこのあたりの回収可能性は取引のサンプルをつかって普通はかなり綿密に調査します。特に内部監査の場合はビジネスの形態もよく頭に入っているのでこのあたり発見できなかったというのはどうしてなのでしょうか。また、第2にこのように回収できない部分が増えるとリース債権が脹れあがってきますからその点でも異常が判明すると思います。想像するに内部監査の権限が弱くてあまり突っ込めなかったか、スキル不足の要因が強いと思われますが、副社長が内部監査報告を握りつぶした点からも内部監査の権限が弱かったのではないかと思われます。
日本企業だと内部監査部門というと、出世コースから途中で外れてしまった方か純粋に外部から連れてこられた公認会計士などの専門家が属する部門でありどちらにしても傍流部門です。一方欧米系グローバル企業ですと上級幹部になるための有力登竜門の一つです。若手エリートが本社直轄で強大な権限を持ってやってきますので、受入れ側としては国税局の査察ほどではないですがかなり強制権を持って行い現地法人の社長などは内心戦々恐々です。彼らの報告内容は本社で厳しく査定され出世競争にさらされているので「何も問題がありませんでした」的なあなあ報告は許されませんので彼らも実は必死です。こういった緊張関係が子会社の管理において威力を発揮しており、ある程度日本企業も見習うべきと思います。余談ですが当然副作用もあり例えば私がGE日本法人財務部長代行だったとき逆に問題点を強引にねつ造しようとした米国本社の内部監査人と大立ち回りをやって結構有名人になってしまったことがありました。当然クビも含めた処分を予想していたのですが本社は公正に判断して監査人側にも行き過ぎがあったということでおとがめなしでした。
少し話はそれましたが、内部監査はむしろ買収した会社や海外の会社の場合重要性はなお一層増します。不正会計問題が起こるたびに日本企業で内部監査制度がきちんと根付くことを祈願してやみません。
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