あいつぐ企業における不正防止における根本的問題
東芝で決算発表が遅延し、DeNAで一連の不適切なキューレーションの扱いについての第三者報告書が出されました。両方とも不祥事ではあるのですが非常に対照的なことに、東芝が大企業的な硬直的で風邪通しの悪い文化が指摘されたのに対し、逆にDeNAでは「永久ベンチャー」を標榜した自由闊達すぎる文化がこの一因となったということです。第3者的に見ると非常に混乱することです。
ただ、両方ともに共通しているのはウェスチングハウスとiemoといった会社を買収した後の統合プロセスに問題があったと言えることです。東芝の場合もDeNAの場合も買収した会社に対しコントロールが働かない状況になっており子会社の暴走が根本的な原因となっています。一つとして特に日本企業の内部監査の弱さにあります。一時期J-SOX(内部統制報告制度)が導入され、この内部監査が注目された時期がありました。しかし、日本企業の内部監査室はJ-SOXで監査法人の監査が問題なく終わるように資料を準備するきわめて形骸的な仕事を行うセクションになりつつあります。如何に期待されていないかはDeNAの第三者報告書(概要)を読むとこれだけの問題なのに31ページの報告書で内部監査室についての記述はたった10行程度しかありません。
通常欧米グローバル企業では買収された会社には統合の過程で内部監査チームが入り、内部のプロセスの問題点について内部統制の観点から徹底的に洗い出されます。一般の方々の印象でいうと内部監査とは書類がそろっていない、印鑑がないといった重箱の隅をつつくようなことをする仕事だと思っていますが、もう少しマクロ的な視点から効率性とリスク軽減の両方の視点を視点をバランスよく持って行うのが本来の姿です。J-SOXの導入によってむしろそういったマクロ的な視点よりもひたすら証跡書面に不備がないかといったミクロ的な視点しか強調されないのは残念です。
この原因としては監査法人側の極端なマニュアル監査の体制にも問題があるような気がしてなりません。私のお客様が愚痴を言っていたのですが監査法人から問題があると指摘された事項で前月をコピペして使っているスプレッド-シートで月の記載が1か所前月のままだったということがあったそうです。確かにあまりほめられたことではないですが内容はきちんと当月のもので特に誤りがあるわけではないです。こういった重箱の隅をつつくようなことを指摘しても意味がないと思います。東芝の例がわかりやすいのですが内部統制において私は一番統制環境が重要だと思い、東芝の場合いわゆる経営陣の倫理性や姿勢に問題がありそのためにすべてのコントロールが形骸化していたところにあります。こういった本質的な部分を軽視して形式的な書類の不備をやたらと指摘する姿勢が最近のマニュアル監査では横行しているような気がしてなりません。
当事務所では本来あるべき内部監査チームのコンサルティングや、内部監査のアウトソース、サポートを承っています。お問い合わせは↓まで